20 / 47
RING OF FIRE
ぺちぺちと頬を叩かれて目が覚めた。
目を開くと、視界いっぱいに志摩さんの顔があった。驚いて声を上げようとして、大きく咳込んだ。横になったまま咳込むのが辛くて体を起こすと、今度は腰が痛んだ。
……立てない気がする。
「いっぱい喘いでくれたもんね」
ペットボトルを差し出され、恥ずかしさもそこそこにそれを喉に流し込んだ。その間もずっと志摩さんは俺のそばで背中をさすって世話を焼いてくれ、俺は勘違いしてしまいそうでどうしていいかわからない。
結局俺は意識を飛ばしてしまい、予定していたいちゃラブなエンディングは撮れなかったらしい。申し訳なさに消えてしまいたい。
腰が言うことを聞かない今、俺に出来るのはベッドの上で頭を下げることだけだった。
「すいませんっ」
シーツに頭を擦り付けていると、いいんだよと志摩さんに起こされる。いいはずがないのに、なんで皆そんなに満足気なんだろう。訳を聞けば、意識を飛ばした俺のがだらだらと後ろから精液をこぼすアップをエンディングにしたらしい。
なんだそりゃ……主役は志摩さんなのに、俺の尻で終わっていいはずがない。あわあわと口を開けたまま動揺する俺に監督が笑いながら声をかける。
「いいんだよ。本当はネコ向けを撮る予定だったけど、あまりにもはじめくんが可愛いからタチ向けに変えたんだ。これから何百人ものゲイが君の尻でヌくんだよ。胸張って」
「は、はぁ……」
まったく嬉しくないけれど、今回が成功ならそれでいいと思うことにする。目的は果たせた。
思う存分俺の尻でヌいてくれ。隣の志摩さんにもお礼を言おうと自由の利かない体で強引に向き直る。
シャワーも浴びずに待っていてくれたらしい、俺の精液だろう汚れにかっこいい腹筋が汚れている。ひぃ、と心の中で悲鳴をあげる。
ありがとうございましたと、頭を下げるとぎゅっと抱きしめられた。
「志摩さん……?」
「俺さ、普段あんな甘いのばっか撮ってるじゃん? 本当はね、今日みたいに好きな子はめちゃめちゃに啼かせたいの。壊れちゃうってくらいぐちゃぐちゃにして、俺とその子しかこの世に存在しないって錯覚するくらい」
「あ、え……?」
「俺の専属にならない? だってほら、はじめくん俺じゃなきゃイけない体になっちゃったし」
抱きしめる腕から力が抜けて、体が離れていく。すっとなくなった体温に体が寂しいと震えた。
降って湧いた専属契約の提案に頭が真っ白になる。
そんな、まさか。いいんだろうか。
願ってもない申し出を逃さないようにと、俺は思わず志摩さんの腕を掴んでいた。
「……好きですっ」
「知ってる。俺もだよ。こんな夢中で抱いたのはじめくんが初めて」
そんでもってはじめくんが最後だといいな……甘い甘い囁きは、俺だけに聞こえる小さな愛の告白だった。
ともだちにシェアしよう!