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HAPPY SURPRISE

「あっ……んあっ、くそっ……んっ!」 「ん……、はあ―最高。ありがとねっ、ほんっと、かわ……い」 「ちょ、やめ……、こんな、あっさすがにいや、だっ!」 「正面から撮らなきゃ意味ないでしょ……んっ、最高っ」  ギシギシと音を立てるベッド、部屋に充満する熱い吐息。 いつもと違うのは明るい寝室とベッドに固定されたスマホ。  皐月にいいようにされることには慣れている。  理人が下なことだって、きちんと納得して受け入れている。だけど、この状況は本意ではない。  いつもと同じように自分の体を気遣って大切に抱かれているというのに、理人は目の前の男に夢中になれずにいた。  理由はわかっている。  ベッドのスマホが自分たちのセックスを〝撮っている〟せいだ。  意外にも嫉妬深い皐月は、誰かに聞かれたり見られたりするのを嫌がって基本的にホテルではセックスしない。  遠征先に恋人を呼び寄せる選手なんてザラにいるのに、皐月はあまりそういうことをしたがらなかった。海外なら……と俺をちらりと伺う顔は当然の如くスルーした。理人はただのサラリーマンだ。  恋人に会う為に、そうしょっちゅう海外になんて行ける身ではない。 「バスケとプライベートはきっちり分けたいんだ」  付き合う前に聞いたバスケへの熱意。それは片思いでもいいと思っていた理人の心を大きく動かした。  だが、いざ付き合うと不便で仕方ない。なかなか会えない上にラブホテルなら周りも同じだろうと聞けば、それこそ盗聴やら盗撮やらが恐ろしいと一掃された。 ──確かに盗撮されるのは困る。  出会った当時はお互い高校生で、まさかこうして同棲までする仲になるとは思いもしなかったが、皐月は今やモデルもこなす人気選手。男とラブホだなんて週刊誌に載ってみろ、バッシングで選手生命が危うくなったら後悔してもしきれない。  そうなればセックスする機会はうんと少なくなる。  理人が普通のサラリーマンで、皐月はあちこち飛び回るプロ選手。ホテルがだめなら抱き合えるのは防音重視で選んだ家賃の高い自宅マンションだけだった。  まあ、それも簡単にはいくわけもなく。  今や野球とサッカーに並ぶ人気スポーツになったバスケットボール。遠征も多く練習の厳しさを知っている身としては、無理だけはさせたくない。天性の才能なのか、有難いことにケガをすることなくここまで来ている。  スタメン入りが当たり前になっても胡坐をかいてはいられない。若手がどんどん出てくる。ポジションを奪おうと皆が必死になっている今、寂しいからなんて理由で無理して日帰りするなんて言語道断だった。

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