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○出勤中の匡(初夏の平日朝)
さびれた商店街を歩いていく匡。
締めたばかりのネクタイを緩める。
匡(しまった、そろそろネクタイ、キツイな……)
※なにも考えずにしてきてしまった。
日差しの方を、手をかざしながら振り返る。
商店街の延長線上には小高い山。初夏の陽を浴びて青青としている。
匡「……」
○黒杉都市開発株式会社(日中)
プレハブの事務所の外観。看板には「黒杉都市開発 臨時事務所」。
中では匡が忙しなく働いている。
電話応対をしたり、書類を作成している。
匡(就活に失敗して最終的に辿り着いたのは、この都市開発会社だった)
匡(自然を切り崩し、別荘地やマンションの建設を強行する……)
匡(大学では造園を学んだが、俺の冷めた態度ではどこにも通用しなかった)
匡が封書を開けると、苦情の手紙。「この町から出ていけ」
※黒杉都市開発がよく思われていないことを表現
匡(この臨時事務所ができて2か月か……)
匡(毎日やまないな、こういう手紙も電話も)
匡、無表情で手紙をシュレッダーにかける。
○家路(夜)
すっかり暗くなった商店街を歩く。
コンビニもなにもない。
匡(腹へった……今日も昼めしとれなかったし)
匡(確かレトルトカレーと、レンチンの米があったはず)
夕食のことを考えながら帰宅。
○アパートのドア前(夜)
匡が鍵を開けようとすると、かすかに室内から音がする。
カチャカチャという音。
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