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そして…19時の鐘が… 「始めます」 ピーンと張るような東洞の声と共に、瞳を開き… 「国近さん、思い出の品をこちらへ」 「あぁ…」 「その品を思い描きながら、意識を品に集中してください」 「…ゆたか」 思い出の品は…小学校の修学旅行で一緒に買ったお揃いのメダル… 二人とも、ずっとカバンにつけていた。 亡くなった日も、それはゆたかのカバンについていた。 巡り巡って、ゆたかのメダルは…俺の元に残った。 これを買った頃は…楽しかったから…今でも昨日のことのように思い出せる… だから、大切にふたつのメダルを持ち続けていて… これが、2人の思い出の品…。 東洞はメダルを懐に入れると… 「解!誘…迎、出、引、入、胎、急々如律令!…来いッ!」 突然、手で印を結びながら、呪文のような言葉を発する東洞。 瞳を開き右手で指され…東洞に、まっすぐ瞳を射抜かれた瞬間… ドクン…ッ 心臓を殴られたような衝撃… 「ッ…う、あ…なんだこれ、気持ち悪い…、くっ…ハァ、ハァ…東洞…」 心の底から湧き上がる嫌悪感… 身体が勝手に震えて…声がでる。 苦しさに東洞を呼んでしまうが… その様子に動じることなく…集中している。 「…、っう、嫌だ…離れたくない…イヤだ…」 なぜか勝手に唇が言葉を紡ぐ… 東洞は、再び印を結び、力強く怒号する。     

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