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「バカやろ、仕事どころじゃないだろ、血を吐いたんだぞ!!」
「あの妖怪、かなり暴れてくれましたから…やっぱ妖怪を身体に留めるのはかなりキツかったですね」
苦笑いしながら話す東洞…
「妖怪封じたらどうなるか知らなかったのかよ」
「妖怪は、初めての試みでした…」
「ばかやろ、なんで言わなかったッお前、死んだらどうするんだ!」
「…死んだら、決められた場所へ逝くだけですよ」
そう、また平然と呟く東洞。
「バカ!まだ逝くな!若いくせになに言ってんだ…」
そんな生気のない顔で言われると堪らなく怖くなり…つい怒ってしまう。
「…ふ、貴方は面白いひとだ…」
そう笑うと…瞳を閉じてしまう。
「国近さんの…オーラ、心地いい…」
小さく囁いて、瞳を閉じてしまう。
「…おい、東洞!?」
「すみません…少し、休みます…国近さんは、気にせず、帰ってくださいね…」
「と、東洞??」
「………」
それきり言葉を発せず、ぐったりと昏睡するように眠りはじめた東洞。
「って帰れるかよ…こんなに血まみれになって…何か拭くものないのか?」
東洞は口の端やら袴の前やらに血が滴りシミになっている。
手で口の周りに着いた血を拭ってやるが、既に固まりかけていて、全部は拭いきれない…
「ていうか、家の人はいないのか?すみません!終わったんで誰か来ていただけませんかー?」
東洞を膝に乗せているので、座ったまま大声で呼んでみる…が、静まり返った屋敷には人の気配はない。
「……待ってろよ、東洞」
東洞を畳に横たえ…
「すみません!誰かー?」
屋敷の廊下を歩きながら、家人を探すが…
端から端まで歩き探すも誰もいない…
少し薄気味悪ささえ感じる屋敷の中…
とりあえず台所にあったタオルだけ持って来て、広間に戻る。
「夕飯どきはとっくに過ぎているのに…誰1人いないのか、この家は…」
ボヤキながら…東洞を抱き寄せ濡れタオルで口の周りを拭いてやる…
昏睡しているのか…起きる気配はない。
「……こいつも、」
なんで、俺なんかの為にここまで出来るんだ?
この能力のこと、最初はあんなにバカにした俺なんかに…
傷ついてまで…
「これは、ちょっとやそっとじゃ恩を返しきれないな…」
そう、眠り続ける霊媒師の青年の額を優しく撫でて呟くのだった…。
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