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《霊媒師の家系》

翌朝。 結局、東洞は目を覚まさないし…家の人は誰も帰ってこなかった。 「さて、どうするか…」 とりあえず会社に東洞の欠勤を伝えて…、俺は仕事に行くか… そう考えていると… 眠り続けていた東洞が… 「う、うー…、うぅ…」 唸り声を上げてうなされはじめる。 「東洞…?」 「おい、東洞!?」 激しく肩を揺さぶると… 「ッ!…ハァ、ハァ…」 バチっと目を覚ます。 うなされた余韻か、息遣いはあらい… 「大丈夫か?東洞…」 「…あれ、国近さん?帰らなかったんですか?」 東洞はキョロキョロと辺りを見回して…不思議そうに聞いてくる。 「まあ、あのまま死なれては困るしな、」 「死にませんよ」 ふっと、笑い答えるが… 「それより、今、うなされてたぞ?大丈夫か?」 「あ、大丈夫です、いつものことなんで…」 「身体も大丈夫か?」 顔色もまだ悪い… 「はは、しばらく全身筋肉痛かもしれません」 「おいおい、…そういえば、家の人は?一応ケガさせてしまった訳だし、親御さんにお詫びの挨拶をしておこうと思うんだが…」 どの程度の傷か分からないが寝込むほど酷使させてしまったから… 「あ、いいですよ気にしないでください、ケガをするのは僕が未熟だからですから」 「いやいや、無茶させたしな、挨拶しないと俺の気が済まないから、な…」 「律儀ですね国近さんは…分かりました…こちらです」 東洞はくすっと笑って立ち上がり、廊下へ歩き出す。 「え、あぁ…」 誰も居なかったはずだが… 首を傾げながら…東洞についていく。 そして奥の間に来て… 「はい、こっちが父でこっちが母です」 「え、…これ」 そこには位牌が二つ並べてあった… 「はい…2人とも亡くなっています」 「……」 「でも、今2人ともここに居ますから…どうぞ」 そう平然とすすめられる… 普通なら頭がおかしいのかと思われる言動だが… いるというからにはいるんだろう…

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