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「……産まれてすぐ焼くのか?」
「はい、この結界を解いたり結んだりしながら霊を降ろしたりしているんです、普段結界を結んでいれば寝てるときとか無防備な時にも憑依されずに済むので結構大切なんですよ」
「…大変なんだな」
取り憑かれる危険を意識した生活なんかおくったことはない…
東洞には、俺の想像を超える苦労があるんだろう。
「正直…こんな家系に産まれたことを呪ったこともありましたけど…この力で救えるひともいるので…今回の国近さんみたいにね、だから今は受け止めてます」
「……東洞…」
そう、悟ったように話す、若いその姿をただ見つめるしかできなかった。
「あ、禊中は喋れないので、すみません、国近さんはお風呂入られてもいいですよ?」
「いや、帰るよ…邪魔しちゃ悪いからな…くれぐれも風邪引くなよ!今日は会社には欠勤伝えとくから」
「はーい、ありがとうございます」
東洞はもう一度振り返り、会釈をして礼を言う。
「……じゃな」
こうして、俺が体験した、非日常的事象は終わりを告げた…。
東洞とは出逢って一週間ほどだが…この夜の出来事は、それを超えてしまえるほど…濃厚で深く心に残る夜だった。
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