「それでも…目の前に苦しんでいる人や、命の危険がある人がいたら…僕は助けたいです」 1人でも多く…見えない脅威に晒されている人たちを助けたい… 見返りなんかいらない… 生きている間に、一体でも多く、悪霊を祓うことは… 子孫を残さない僕に出来る唯一の義務だから… 「それはお前が関わることじゃ無い、取り憑かれて死ぬなら、それがそいつの運命だ…」 「……」 「どうしても助けたいやつがいるなら俺に言え、正式な依頼として受けてから考える…無償で一般の人間を助ける必要は無い…お前の力は特別なんだから、軽々しく使うな！分かったな！」 「……特別って」 ぽそっと呟いてしまう。 特別って…何？ もううんざり… 普通になりたい… 普通に…みんなと同じように… 何でこんな家に生まれたんだろう… 自問自答…もう何回目だろう… 答えなんか出ない…もうどんなに足掻いても決められてしまっているから… 「何？」 「優志さん…国近さんをまた家に呼びたいです」 決められた動かせないものはどうにもならないけれど… 動かせるものもある。 「あの男？ダメだ…」 やはり聞く耳持たず断る優志。 「国近さん、優志さんに謝ってくれって言ってました…料理のこと…」 誠実な人だと、分かってもらうため伝えるが… 「当たり前だ、一般人の癖に…勝手なことを…」 不機嫌なまま…言い捨てる。 「国近さんは、本当にいい人なんです…前のようにはならない…だから家に招いてもいいでしょ？」 「ダメだ…お前は騙されやすい、周りに影響を受けやす過ぎる、あの男には近づくな…いいな」 やはり有無を言わさぬ物言い。 「……」 短く首を横に振る。 やっぱり優志さんは許してくれない。 悲しく思いながらも、言う通りにはしたくなくて… 「尊…」 「ごちそうさま…」 食べかけの食事を残し、立ち上がり…自室へ逃げるように帰る。