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第51話
優志は右手で符を、人差し指と中指で挟むように持ち…
言の葉を紡ぐ…
「汝を守りし結界の柱、邪気を寄せ付けぬ低、中、高…全ての結界を解印す…さらに心の臓に宿りし高位結界…今一度、白紙に戻せ…解!!」
何重にも掛けてあった結界がするすると散っていく…
「っ…あ、…優志さん、なんで…」
「これでお前を守る盾は、家に張られた結界のみ…お前は俺の結界がないと屋敷から一歩も外に出られない…よく自覚しろ」
「…そんな、お願いします…結界を…戻して…」
霊媒師にとって、身を守る結界がない状態は…
この上なく不安になる。
無意識に震える身体は…恐怖心を表していて…
それを抑えるよう自分自身の腕を掴み、縋る目つきで懇願するが…
「ダメだ、1日それで過ごして思いを改めろ…お前は特別なんだ、一般の人間のような普通の生活なんかしなくていい…」
「っ…優志さん、待って!…優志さんッ」
優志は、反省させるつもりで、尊の願いを無視し、部屋を後にする。
「…っ、……」
結界がないと…
外に出れない…
仕事に行けない…
国近さんに会えない…
「っ…ふ、ッ…イヤだ…」
様々な感情が入り混じり…ポロポロと、涙がこぼれ落ちていく…
この、呪われた身体ひとつで…夜を明かさなければならなくなった…。
「ッ…、」
尊は護身用の札を持ち、そろりと部屋を移動する。
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