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八本目は誓いを_07

「あんた、声が武器なんだからもっと喉労われよ! 俺、あんたの歌声が好きなんすよ、あんた自身に惚れてるかはわかんねーけど、その歌声には確かに惚れてる。だから、俺のせいで喉いてぇとか、ぜってぇ言わせたくない。だからさぁ、もっと、自分の体労ってくれません? あんたが労わらないって言うなら、俺があんた以上に労わりますから」  ずるずるとしゃがみ込んで、音八先輩と目を合わせる。なんとも最低すぎる告白だ。いや、告白とも呼べそうにない。だけど、音八先輩はお気に召したのか、ゲラゲラと手を叩いて俺に抱きついてきた。 「あー、マジでサイコーだな」 「……な、にがっすか」 「ちんぽ腫らしてるくせに、俺のこと気遣うとか、お前俺のカレシかよ。いや、敏腕ジャーマネか。俺のこと気遣ってセックスするオトコなんて一人としていなかったから、マジで新鮮で笑えるし、まー……ちょっと、うっかり、ときめいたわ」  今のどこにときめく要素があったわけ?  疑問しか浮かばなかったけれど、俺にとって些細な言葉で音八先輩が救われたことがあるのだ、どこかしらで音八先輩がときめいてもおかしくはない、きっと。  俺の肩口に顔を埋める音八先輩の髪を撫でる。これからメジャーデビューするのだから、この髪もちゃんと綺麗にしてもらわなくちゃ。ギスギスの体も、もっと鍛えて人に見せられるようにしなくちゃ。俺は音八先輩のカレシじゃなくて、敏腕ジャーマネなのだから、この人をきちんとプロデュースしなくてはならない。 「きっとあんたは、俺のカレシで終わる人じゃないっすよ。世界の『音速エアライン』になって、世界の『月島音八』になるんすよ。俺は、そんなあんたの一生そばにいます」 「はっ、それってプロポーズかよ。カレシカノジョより熱烈じゃねぇか。マジでサイコーだな、本郷くんは」  言われてみてはっとする。一生支える、そばにいる、それは確かに熱烈プロポーズだ。 「そうっすね、プロポーズっすよ。俺は音八パイセンの歌声を愛してますからね。カレシなんかじゃなくて、一生あんただけのセブンスターでいさせてくださいよ。左手の薬指に誓うのは俺たちらしくねぇんで、あんたの唇に誓いましょうか」  音八先輩の顎を掴んで、厚ぼったい唇を撫でる。少しカサついているなぁ、俺が潤わせてあげないと。ゆっくり顔を傾け、ちゅうっとキスをする。ぽかんとしていた音八先輩の頬がじわじわと赤く染まっていく。  え、なんで。いつも顔赤らめたりしないじゃん。俺を自由に翻弄して、楽しんで笑っているじゃん。急に顔赤くするとかなんなの、可愛いんですけど。 「……てめぇは少女漫画のヒーローかよ。あー、クソ、そーいう砂糖で固めた愛はいらねぇっての、それより続きしようぜ」  きっと照れ隠しだなと笑っていると、耳まで赤くした音八先輩が俺のモノをきゅっと握る。ちょっと痛いんすけどぉと抗議しようと思ったのに、親指で裏筋を撫でるあたり欲求に対して抜かりがない。 「どーせなら、あんたも一緒に気持ちよくなったほうがよくないっすか」  音八先輩の下半身に手を伸ばすと、俺よりも勃起している。ちんぽ舐めて勃起させるとかやっぱりビッチだなと笑いながら、ファスナーを下げた。  四信先輩以外の男の下着を見て、興奮する日が来ようとは思わなかった。四信先輩の下着姿を想像して抜いたことは数えきれないほどあるけど、四信先輩以外の男に触れるとは思わなかった。  下着の上からやわやわと揉む。ちょっと揉んだだけなのに、音八先輩は一瞬にして瞳を潤ませて腰をゆさゆさと揺らした。 「ぁ、あーッ……きもちいー、どうせだから、兜合わせでもすっかぁ」 「カブトアワセ? なんすか、それ」 「知らねぇの? まー、ノンケだから知らねぇか、俺とお前のちんぽをくっつけたり、一緒に扱いたり、キスしたりするん、だよッ……んぁあ、サイコー、だわ」  音八先輩は下着をずり下ろすと、互いのモノを握り込んですりと擦り合わせる。視覚的にもそそられるのに、カリ首同士をひっかけ合うように手を動かすから、ぞくぞくと痺れが走った。  あ、やばい。これは、気持ちよすぎる。変な声出そうだ。でも、この距離なら俺も音八先輩に触り放題だ。そっと手を伸ばして、先走りですっかり濡れている鈴口を指先で撫でる。 「は、ぁん……っいいぜ、もっと触れよ、やっぱ本郷の手は格別にイイなぁ……ッ」  音八先輩の腰がビクビクと震え、トプリと先走りが溢れだす。まるで歌っている時のように、その声には艶が出始めた気がしてごくりと唾を飲んでいた。 「俺の手、いいんすか?」  ぐちゅぐちゅ、鈴口を擦るたびに卑猥な音が上がり、音八先輩の瞳にはわかりやすくハートが浮かぶ。AVでも見ないほどにわかりやすくとろけた表情だ。 「ぅぁあ、……っ当たり前だろ、俺、ほんごーのこと、好きだからなぁ……んぁ、あっ!」  いま、好きって言うのずるくない?  うっかり膨れ上がった亀頭をぎゅっと指先で握ってしまうと、ビュクリと精液が噴き出して頬へと飛んだ。顔射とかAVかよと笑っていると、はぁはぁと荒い吐息を零している音八先輩が俺の頬についた精液をべろと舐め上げる。 「……おえっ、まっずい。いやー、好きなヤツの手だと興奮して早漏になるとかどこの中学生だろうなぁ」 「音八パイセンって恋愛耐性なさすぎるっしょ」 「それ、お前もじゃね?」 「それな! お互い様っすね、俺たち」 「お互い様だけど、てめぇはまだイってねぇし、責任持ってイかせてやるよ。そしたら打ち上げ行くぞ」 「えっ、俺も行っていいんすか」 「は? 当たり前だろ、敏腕ジャーマネさんよ」  音八先輩はゆるく口角を上げると、親指と人差し指で輪っかを作りカリの出っ張りに引っ掛けるように上下に扱く。会話には微塵も色気がないのに、手つきだけはとびきりいやらしい。  女の子たちとのセックスは、雰囲気からなにまで色気たっぷり頑張った。音八先輩相手だと、そういう雰囲気はいらない。少女漫画のヒーローかときっと照れられてしまう。それがあまりに心地よくて、音八先輩にキスをしていた。おえ、苦い。精液ってセブンスターよりよっぽど不味い。 「美味いか?」  それは最悪の出会いを果たした日、キスをしたあとに音八先輩が言った台詞だ。その時と同じように音八先輩の唇は上機嫌に弧を描いていた。 「不味いっす」  あの時と同じ台詞を返すと、ゆるく口角を上げて音八先輩の胸ぐらを掴んで厚ぼったい唇を塞ぐ。やっぱり不味いなと目を閉じると、ふっと笑い声が聞こえた。目を閉じるたび、この人はきっと笑うのだろう。その笑い声さえ、愛しいと思ってしまっていることは、一生秘密にしてやろう。

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