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彼の婚約者
彼と出会い、二度目の冬。
「ねぇ、さっきのと、これどれがいい!?」
日曜日。
駅前のホテルのブライダルサロン。信孝さんの婚約者、広岡凛香 さんのウェデングドレスの試着に、信孝さんと共に付き合わされていた。
信孝さんと同い年の凛香さん。双子の兄、光希さんが信孝さんとクラスメイトだった事がきっかけで出会い、以後、良き友人関係を続けてきた。それが一ヶ月前に突然、信孝さんとの婚約を発表して周囲を驚かせた。しかも、凛香さんのお腹の中には新しい命が宿っている。
はたから見ても幸せオーラ全開の二人。場所が場所だけに、周りを見てもカップルだらけで、僕一人だけが浮いているようで、それがとても辛かった。
「今日は妹さんもご一緒なんですね」
二人の応対をしていたウェデングプランナーの女性が、唐突にそんな事を口にした。どちらかといえば女顔で、中性的とよく言われる自分の顔。しかも体も背も小さいから、女子にしょっちゅう間違われる。神様は不公平だ。なにもかもが中途半端。もっと男らしくしてくれたら、諦めもついただろうに。
「みのり、ナオは男」
信孝さんが笑って答えた。プランナーの女性の胸元のネームプレートには、『大内』の文字。二人は顔見知りのようだった。
「ごめんなさい。悪く思わないでね」
「大丈夫です」
僕が応えると、信孝さんの方に目を向けた。
「それにしても、あれだけ家庭は持たないと言っていた信孝がねぇ」
感慨無量な面持ちになった。
「実家は、妹が婿養子を迎えて、跡を継がなくても良くなったから。家庭を築くのもありかなって。俺も、32だし、いつまでも一人という訳にはいかないから」
「そっかあ。でも、まさか、凛香と結婚するとは思わなかった」
「それ、どういう意味ですか?」
凛香さんを中心に話しが弾む。その輪にどうしても入ることが出来なかった。
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