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「………」 「………」 続く沈黙。 俺の唾を飲み込む音が妙に響く。…は、恥ずかしい。何か会話を。会話を見つけなければ…っ。 だが何を言えばいいやら。 パニックになったせいで、俺の口から最初に出た言葉がこれだった。 「た、武宮さんは、何で妹に手を出さないんですか?」 「………」 死ね、俺! 何て会話のチョイスしてるんだ俺は。馬鹿か、もう死にたい。いっそ誰か殺してくれ。だが一度会話を持ち出した以上撤回する勇気もなく、俺は上ずった声で更に話を進めた。 「き、昨日妹から、相談されちゃって」 「………」 「何でかなぁ、とか思っちゃって…」 「………」 「…あはははは、」 …ははは、死にたい。 もう最悪だ。「気の利かない奴」どころか「うざい糞野郎」と認識されてしまったに違いない。もう落ちるところがないくらいだろうな。 「……」 それなら、そうだな。 どうせ嫌われてしまっているなら、とことん嫌われてやろうかな。そんなことを思ってしまった。 「もしかして、キスの経験がないからとか?」 「………」 「…あはは、それなら俺が練習台になってあげましょうか、……なんて」 乾いた笑みを浮かべながら冗談混じりに言えば、今まで反応さえしなかった武宮さんが俺の方を見てきた。 ……その視線はとても冷たく感じた。 「じょ、冗談でもキモイこと言ってごめんなさい…っ」 もうやだ。何でこんなことになったんだろう。焦り過ぎて突拍子もないことばっかり喋り過ぎてしまった。今更後悔しても遅いだろう。 本当は武宮さんに嫌われたくないのに、最悪だ。…やばい、泣きそう。 鼻を啜りながら俯いていれば、武宮さんが俺に話し掛けてくれた。 「……練習」 「…え?」 「練習、させてくれないか?」 俺は、固まった。 「…あ、…え?」 何?今の幻聴? 「えっと、その」 「練習、…させてくれねえの?」 「……っ、」 ペロリと自分の下唇を舐める武宮さんの男の色気にやられて、俺は言葉を失う。クールな武宮さんがこんなことを言うなんて信じられない。 ……だったらこれは夢なのだろうか。 もしかしたら武宮さんとキスがしたいあまりに、無意識の内に妄想に浸ってしまっているだけかもしれない。 「……」 俺は期待と興奮で口内に溜まった唾をゴクリと飲み込んだ。も、妄想の世界だったら、俺が武宮さんとキスしようが関係ないよな?妹だってそれなら許してくれるはず…っ。 現実なのか妄想なのか判断が出来なくなった俺は、自分の欲望に素直に従って、武宮さんの唇に自分の唇をくっ付けた。 「……ん」 温かくて、柔らかい…。 俺、武宮さんとキスしてるんだ。ずっと、ずっと想い続けていた人と……。

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