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「好きだ」 「……っ、ぅ」 「ずっと、前から」 「武、宮…さん」 「…何故、また泣く」 「……だ、だってっ、だってぇ…」 ああ、やっぱりこれは夢なのかな…。 だって、こんな、…こんなこと本当にあるの?武宮さんが、俺のことを好き?本当に? ずっと見たくても見れなかった夢が、現実で叶うことなんてあるのか…? すると武宮さんは震える俺の手を握りながら、ポツポツと今までのことや、そして武宮さんの本心を話してくれた。 「…俺たちがまだ中学生の頃、」 「中学…?」 「ああ。駅のホームや家の階段から落ちた時のように、…足を踏み外した順平を助けたことがある」 「…え…?」 う、嘘…? 俺ってそんな昔から武宮さんに助けてもらっていたのか?最悪な事に全然記憶がないんだけど…。 「順平は知らないはずだ。…後ろを振り返る余裕もなかっただろうから」 「………、」 どうやらバスに乗る際に、人に押された俺は頭から後ろに落ちようとしていたらしい。そしてそのときタイミング良く後ろに居てくれた武宮さんが俺を支えてくれて、大惨事にならなかったようだ。 「こちらを振り向く余裕もなさそうで、…それなのに、震えながら謝罪と礼の言葉を述べる順平に…、庇護欲を掻き立てられた」 「……っ、」 「俺が護ってやらないと駄目だと、…そう思ったんだ」 「武宮さ、ん」 「偶然にも隣同士に座れたときは、…堪らなく嬉しかった」 ふとした拍子に肩が触れ合う度に緊張していた…と、懐かしむように、握った俺の手の甲に唇を寄せてキスをする武宮さんに、俺の心臓は痛いほど高鳴っている。 「今思えば一目惚れだったのかもな」 どうやらそのときはまだ俺に恋愛感情など抱いてはいなかったようだ。ただ俺を護ってやりたいと思っていただけでのようで、…武宮さんの話を聞いていて、顔から火が出そうなほど恥ずかしくなる。 「同じ時間のバスに乗ったり、住所を調べたり、好みの物を調べたり、…お前のことをストーカーのように調べていた」 「…え?す、ストーカー…ですか?」 「ああ、好きだからもっと順平のことが知りたかった」 「……、」 中学の頃から、…俺そんなの全然気付かなかった。俺も武宮さんのストーカーだけど、まさか武宮さんも俺のことをストーカーしていたなんて。 「だから駅のホームで転落した時から、…俺のことを気になってくれているのが分かって…嬉しかった」 「…き、気付いてたんですか?…俺が、ストーカーしてるって…?」 「当たり前だ。…俺が何年間順平を見てると思ってるんだ」 「……っ、」 ああ、やばい。 どうしよう恥ずかしい。だけどそれ以上に嬉しい。 本当に夢のようだ。こんなの今までだったら考えられない。 「好きなんだ。…どうしようもないくらい好きだ」 「……」 「…順平の答えも聞かせてくれ」 「そ、そんなの…」 答えなんて一つしかないじゃないか。 それなのにわざわざ聞くなんて、…武宮さんは意地悪な人だ…。 「…順平」 「……す、」 「ん?」 「す、…す、き…です、」 「もう一回」 「お、俺も、好きです…っ。大好きです!」 恥ずかしくて最後は大きな声で叫んでしまった。しかし武宮さんは始終嬉しそうに頬を緩めて俺を見てくるものだから、俺はこれ以上何も言えなくなる。 「可愛いな」 「……っ、」 「もう一生俺の物だ」 「…武宮さんも、…一生俺の物です…っ」 「ああ、当たり前だ」 ペロリと上唇を舐められ、俺はびっくりして身体を仰け反らせる。だけど抵抗なんて武宮さんが許してくれるわけもなく、腰を掴まれ、…触れ合うだけのキスをしてくれた。 これからが本番だな、と耳元でいい声で囁かれて、おもわず腰が砕けてしまったのは、 ………ここだけの秘密だ。

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