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ベリアルのプレゼント《1》
「ルノア…?」
「あ、申し訳ございません。ベリアル様。今、お茶の御用意を致しますね!」
もうお茶の時間かと慌てるルノアに、ベリアルは腕を掴んで制する。
「よい、それより私の隣りにおいで」
「は、はい…」
「貴方、欲しい物はありませんか?」
「欲しいもの?」
大きな瞳が、キョトンとベリアルを見上げる。
「お前は何もねだらないから、何を与えたら良いのか分からない」
想いが通じて、はれて恋人になった2人だったが、ルノアは毎日神への感謝の言葉は欠かさないし、よく働く。
魔界で生活しているというのに、ルノアが堕落する様子は少しもなかった。
そんな姿を見ていれば、自分と出逢わなければルノアはいずれ天界で大天使になれたのではないかとさえベリアルは思う。
だけれど、もう手放す事なんて出来なくて、せめて不自由なく暮らさせてやりたいと思うけれど、ルノアの口から文句や愚痴の一つも聞いた事が無い。
「私は、ベリアル様と一緒にいられれば他には何にもいりません」
そして、毎回そう答えては本当に幸せそうに微笑むのだ。
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