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ベリアルのプレゼント《3》

ルノアから、欲しい物を聞き出すのは無理そうだと判断したベリアルは、珍しく当惑していた。 「ふむ…」 ふと、庭に視線を向ければ、ルノアがぽつりとどこか寂しそうに花を見ていた。 そして、ふと思い出す。 ルノアへの己の気持ちを自覚したあの日、ルノアが手を握っていた庭師の事を。   ルノアを助けてくれと、必死に懇願してきた男。 後からルノアに聞いた話では、花の育て方を丁寧に教えてくれ、親切にしてくれたとの事だった。 庭師の方に、下心がある様な気もしたが、害はなさそうなのでベリアルは放っておく事にした。 あの一件以来も、ラルドはルノアに庭の事や、様々な花の手入れの仕方を教えている様だった。 だが、つい最近、ベリアルの庭への配属の任期が終わり、元の持ち場へ戻っていったのだ。 ベリアルと一緒にいる時は幸せそうなルノアだったが、庭で一人で寂しげに花を愛でる姿をよく目にする様になった。 それは、庭師が居なくなってからの光景だと、ベリアルは気づく。

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