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ベリアルのプレゼント《5》

そんな時だった。 「ラルドーっ!!」 親しい庭師仲間がひどく慌てた様子で、息を切らせて走って来たのだ。 その顔は血の気が引いて、引き攣っている。 平和な日常には不釣り合いな仲間の慌てぶりに、ラルドは首を捻った。 「おいおい、お前大丈夫か?そんな真っ青な顔して…」 ぜえぜえと肩で息をする仲間の背中を叩いてやる。 「だ、大丈夫かは、こっちの台詞だぜ!」 「あ?何がだ?」 「…………お、お前、まさか、まだ知らないのか?」 「だから、何が?」 息を切らせて走って来た癖に、言いにくそうに口ごもられ、若干苛立ちながらラルドは急かした。 「お、お前が、ベリアル様の専属の庭師に移動って話をだよ!!」 「………………はあぁあぁあぁっ!!!???」 とんでもない発言に、あまりにも衝撃を受けたラルドは、目を剥いて驚いた。 「な、何かの間違いだろ!?」 「間違いじゃねぇよ!でかでかと人事で貼り出されてんだからよ!」 「な…………」 やっと取り戻した平穏が音を立てて崩れていく音が、ラルドにははっきりと聞こえた気がした。

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