5 / 44
ベリアルのプレゼント《5》
そんな時だった。
「ラルドーっ!!」
親しい庭師仲間がひどく慌てた様子で、息を切らせて走って来たのだ。
その顔は血の気が引いて、引き攣っている。
平和な日常には不釣り合いな仲間の慌てぶりに、ラルドは首を捻った。
「おいおい、お前大丈夫か?そんな真っ青な顔して…」
ぜえぜえと肩で息をする仲間の背中を叩いてやる。
「だ、大丈夫かは、こっちの台詞だぜ!」
「あ?何がだ?」
「…………お、お前、まさか、まだ知らないのか?」
「だから、何が?」
息を切らせて走って来た癖に、言いにくそうに口ごもられ、若干苛立ちながらラルドは急かした。
「お、お前が、ベリアル様の専属の庭師に移動って話をだよ!!」
「………………はあぁあぁあぁっ!!!???」
とんでもない発言に、あまりにも衝撃を受けたラルドは、目を剥いて驚いた。
「な、何かの間違いだろ!?」
「間違いじゃねぇよ!でかでかと人事で貼り出されてんだからよ!」
「な…………」
やっと取り戻した平穏が音を立てて崩れていく音が、ラルドにははっきりと聞こえた気がした。
ともだちにシェアしよう!