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第3話

酔いがまわるに連れて、皆んな席を移動し始める。 いつも仲の良い皆川と原田のツンデレカップルの話も良いけれど、先輩がどうしてるのか知りたい。 僕は先輩グループに混じろうと、自分のビールを持ち、移動した。 「三好先輩、お久しぶりです。矢田です。覚えてます?」 「ヤダヤダの矢田ちゃんじゃーん,飲んでルゥ?」 もう結構酔ってしまっている様子の三好先輩に話しかける。名前を揶揄されるがコレで覚えられたこともあり、この呼び方で呼ばれても僕は腹を立てたりしない。 先輩の中でも大下先輩だけは名前を馬鹿にしなかったのをはっきり覚えている。 それは僕にとって彼を群衆から際立たせる一つの要因になった。 三好先輩は大下先輩と一番仲がいいはずだった。いきなり大下先輩の事を聞くのも現金なので、ひとまず三好先輩の近況を聞いてみる。 「先輩はお仕事忙しいですか?先輩も商社でしたよね?」 「おお、俺商社マンだよ、しがない上場もしてない中小企業のなぁ~。しんどいぜ商社はよ~。俺理数系じゃないからさ、営業とか、事務とかしかできねえし…。 かといって設計みたいに夜遅くまでしないとダメっつうのも大変だしよ、兎に角なぁ…」 しまった、タイミングが悪すぎたようだ。三好先輩はひとしきり愚痴が終わらないと相手の話を聞かない。 どうしてこの先輩と大下先輩が仲が良いのかいつも不思議だったのを思い出した。 三好先輩の愚痴はまだ終わりそうになく、僕は、ウンウンと頷くだけで時間が過ぎていく。 そこへいつもゼミの取りまとめ役をしていた香山先輩が来た。 「こら、三好。矢田ちゃんの時間を君の愚痴のはけ口にして今日を終わらせる気?良い加減に愚痴はよして、先輩らしく後輩に良いこととか、勉強になる事とか、励ましとか役に立つ話しなよ!」 一喝してもらえてありがたい。これ以上聞いてると参りそうだった。 「矢田ちゃんも、優しいふりして聞いてないで、自分の時間は有意義に使う!いいね!」 僕も一喝されてしまった。 「はいっ…。」 さすが香山先輩、もと大下先輩の彼女である。 大下先輩と僕が仲良くなり始めた頃、2人はすれ違いで別れたと聞いた。 僕はそれが気になっていた。そして後ろめたさも持ち合わせて、香山先輩には話しかけにくかった。 「大下は今日は来れないんだって?矢田ちゃん。」 「あ、はいっ、僕も皆川から聞きました。」 とりあえず三好先輩は愚痴をまた別の人に話し出したので、僕は香山先輩に聞いてみることに決めた。 「大下先輩、元気してますか?」 「えっ?連絡とってないの?」 「あ、はい…、先輩卒業してからほとんど…。」 「なにそれ?!」 「えっ…。その…新しい仕事で忙しいって…僕が就職してからも、今度は僕が忙しいだろうって…。」 「だからってあんた達2年も話してないの!?」 「ま、まぁそうですね…ほぼほぼ…。」 香山先輩の怒りボルテージが上がりだした。 「なに考えてんの!矢田ちゃんもアイツも!」

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