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第2話

同窓会を心待ちにしていると日常はあっという間に過ぎて言った。 毎日があんなに退屈だったのに、同窓会のことを考えると仕事も早く片付けて、なんとはなしにダイエットをしてみたり、慣れない筋トレをしてみたり。 そわそわする気持が心地よい。 人は楽しみがあると色々頑張れるのだと、改めて思う。 今日はとうとう同窓会の日だ。 久しぶりに会うみんなはどんな風にかわったのだろう。そして僕はどんな風になったと思われるかな? そして先輩は本当に来るのだろうか? 見慣れたお店の構え。すこし小汚い旗に店名が書いてあり、上に構えてある電光サインも相変わらずだった。 安くて近くて、僕の家から歩いて行けて、大学にも近かったこの店は、ゼミのみんなと一緒によく飲んで溜まり場になっていた。 もうみんな居るかな? ドキドキしながら木の枠で少し日本風な引き戸をガラガラと開ける。 「ラッシャーイ!!」 店員さんの元気な声で迎えられると、テーブルを拭いていたハチマキ姿の店長と奥にいる塊が僕を見る。 「おおい!こっちこっち!矢田!」 「あ!うん!久しぶり!」 僕は手を挙げて向かう。 「らっしゃい、矢田ちゃん!長いこと来てくれてないやん」 「あ、店長さん、覚えててくれたんですか?僕影薄いのに。」 声をかけられて照れくさくて頭をかいてしまった。 「そりゃちょっとの間だけど、バイトしてくれてたんやし、覚えとるよ。来てくれて嬉しいよ、お仲間さんところにどうぞぉ。」 そう言って嬉しい言葉をかけてくれた。 家も近い僕は大学生の頃はここでバイトさせてもらってた事がある。その動機は不純で、店長さんは何もかもを知っているので僕は気恥ずかしかったがそれでもこうやって会えて嬉しいと思える。 そっと見守って過ごしてくれた優しい店長さんだ。今でも来ようと思えば来れるのだから、もっと顔を出そうと思った。 座敷に沢山座っているゼミの仲間たちの靴がずらりと床に並び、僕の靴も揃えて脱ぐ。 顔をぐるりと見渡したら、皆川と原田が一緒に座っているのを見つけた。その前が空いているので、皆んなに「久しぶり」と愛想を振りまきながらその席にたどり着く。 「よっ!矢田!元気そうだね!」 「皆川、電話くれてありがとう~。」 「おう、矢田!相変わらずか弱いままだな!」 「原田は相変わらず口が悪いよ。」 「あははは、皆んなそんな変わらないね。」 屈託うのない話だけれど、まだ少しドキドキする。 もう一度席について顔を探すけれど、先輩達の中に、僕の会いたかった人が見えない。 「何飲む~?」 と聞いてくる皆川に僕は、店員さんが渡してくれたタオルで手を拭きながら、ビールで、と視線を彼女に戻した。 「何?大下先輩?」 「え?あ、うん。今日来るんでしょ?」 「それが、残念、残業らしくってね、来れないってさっきメッセあったんだー。」 「そうっか…。」 あからさまに残念そうにしてしまった…。 原田が揶揄する。 「おうおう、愛しの先輩が居ないからつまんないってか??」 「そ、そう言うんじゃなくて、全然連絡とってないから、どうしてるのか気になってて。」 「ええ?あんなに仲良かったのに?」 皆川は驚いていた。 「そんなに驚かなくても。大下先輩就職先、忙しい商社の営業って言ってたからね。後輩だからって甘えて電話ばかりしてたら迷惑だろう?」 「ふーん。」 含みを持たせて皆川は自分のアルコールを飲んだ。

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