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叶わぬ夢追い

 鬼の里で一番広い屋敷の奥にある静まり返った一室で荒い吐息が漏れていた。  そこは座敷牢だったが、生活の薫りが色濃く出ている。そしてその部屋の中心では、まるで見世物のように格子に向かって足を大きく開いている少年の姿があった。  幼いながら着物を淫靡なまでに着崩して、まだ未熟とも言える小さな雄の象徴を上向かせている。そしてその奥では、本来ならば何かを受け入れる事はしないはずの場所が紅色に色付いたままひくりひくりと何かを求めるように動いていた。扇情的なその様を見る者は格子の先にはまだいない。 「うづき…うづきがほしいよ…うづきぃ…」  譫言(うわごと)のように吐息混じりに吐き出される言葉は切なく響く。しかし、返事の変わりに閉ざされていた襖が静かに開いて、そっと入ってくる男がいた。  健康的な蜂蜜色の肌と、肌に相反するように限りなく白に近い灰色の髪は目に眩しい。そして(はしばみ)色の目はあられもない星月の姿を確認すると恥ずかしそうに逸らされたが、頭の上にある犬の耳はピンと立って星月に向けられている。それはこれからの事に対しての期待だと知っているのは彼本人と星月だけだ。 「こよみ…おいで、こよみ…」  星月が手まねくと、こよみと呼ばれた男は少しだけ嬉しそうに頬を赤らめて格子の中へと入る。鍵や扉なぞ、こよみには有って無いようなものだ。  こよみは星月の前に犬のお座りの体制で控え、次の指示を待っている。しかし、彼の股関では三本目の足と見紛う物が主張し始めていた。それを星月は満足そうに見て自分の尻の肉を両手で広げる。すでに入念に塗り込めておいた香油がひくつく孔からとろりと垂れた。 「よし」  星月が発したのはたった一言だったが、こよみは待ってましたとばかりにその淫靡な孔に張りつめていた己の怒張を一気に突き立てる。 「あ"…ッ!ひゅ…」  内蔵を押し上げられた感覚に星月の意識は持っていかれそうになるが、犬科の獣と同じ形の凶器がもたらす暴力的なまでの快楽がそれを許さない。星月の欲がもっと欲しいと意識を繋ぎ止めたまま、感覚は更に敏感に研ぎ澄まされる。  そして女性器にも負けないほど柔く淫らに育てあげられた男児の尻は、突き立てられた雄の凶器をその肉壁で離さないと言わんばかりにねっとりと包容した。 「ふっ…!ほし、つきさまぁ…!」  すぐにでも種を吐き出したいほど淫らな肉壁の包容にこよみは耐え、仕返しと言わんばかりに腰を激しく動かして星月の尻を己の肉杭で穿つ。  肉と肉がぶつかり合う背徳的な音と、それに混ざる粘りけのあるぬるい水の音を聞く者がいたならば一気に劣情が首をもたげただろう。そして交じり合う二人に誘われるがまま、星月の体に跨がっただろう。  だが、今はこよみと星月しかいない。星月は快楽を欲するまま、こよみは己が望むまま交わい続ける。 「あひゅ、…アッあっ、ぁっあっ!」  星月は腹の奥を突かれる度に壊れた玩具のように甘く切ない声で鳴き続け、上向いている男の象徴から透明な液体を吐き出し続けていた。 「星月さま、星月さまぁ…!星月さま、俺の、俺の子を孕んで」 「ん、ひぁぁぁぁ!あちゅい…!あ、ひ…!」  喘いだままの星月の耳を食みながらより一層強く腰を打ち付けたこよみは大量の種を吐き出す。すぐに下腹が膨れる程に種を吐き出したこよみの凶器は根本が膨んで星月の孔に栓をした。 「星月さま、 孕んで」 「アん!ぁっ、あっ、あっ、ぁっ、アっ!!」  ねやによって開発され、快楽しか拾わなくなった腹の中を形が変わった雄の凶器でグリグリと責め立てられれば星月はもう甘い音でしか声を発せない。しかし、その首はこよみの望みで縦に振られる事は無い。  星月が望むのは姿を消した者たった一人なのだ。こよみは星月にとって丁度良い快楽のためのかわいい飼い犬でしかない。互いに分かっているが、こよみは星月に望む。そして星月は望む者を再び手に入れるために快感に溶けてドロドロになった頭の中で思考を巡らせていた。

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