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第27話*再会*
「なんかあっという間に毎日って過ぎるんだなあ。それに喰われてないし。これってお礼を言うべきなの?正直着物の事も聞きたいし、しかもシマさん自分で探せって
・・なんか相変わらず。感じろって何を?
それに俺ご寝所以外で知っているの、あそこしかない」
『でもきっとあそこにいる気がする』
『初めて二人で同じ景色を見た・・』
会って何を話せばいいんだろう。何で喰わなかったんですか?とか。
ゆっくり歩いていると、あの場所が近づいてきた。二人で雨を見た大きな窓のある寝椅子のあるところ。この角を曲がれば・・
『お、おやかたさま・・』
狐は寝椅子に横たわりながら窓の外をずっと見ていた。
トキワは声が出せず立ち尽くしていた。狐がこちらを向く。
体に力が入る。体が激痛を思い出す。
「あ・・」
『なにか言わなきゃ。機嫌とか損ねたら・・』
「息災か」
穏やかな口調で狐に問われた。
「体は辛くないか」
「・・あっ、あ、はい!」
狐は視線を落とす。
「着物の裾が汚れている。シマは新しいものを用意していないのか?」
「あ、違います。俺がずっと着ていました。このだいだいに近い黄色と食用にならない小さな実。これトキワ柿ですよね」
「お前は本当に頭のよい童だな」
「俺の目の色に合わないからずっとしまっていた。でも一番にそろえたのがこの着物だってシマさんが」
「でも俺、贄嫁だから喰われるはずですよね。この着物は、せめてものお情けなのですか?」
胸につかえていたものが少しずつあふれてくる。
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