93 / 95
第93話*そして永遠に*
小高い丘の上に天我が腰を下ろしている。
心なしか髪の艶が無くなっていた。そして天我は少し盛られている土に話しかける。
「すみれ、もうすぐお前の所に行かれる。体がそう教えてくれている」
「俺の人生のほんの数百年だが、こんなに満たされた時間はなかった」
「すみれ。お前を愛して愛されてなんと素晴らしい日々だったか。
目を閉じるといつでも美しいお前がいる」
天我は盛り土の横に寄り添った。
まわりは一面すみれの花が敷き詰められている。
「そうだすみれ、シマはまだいるぞ。天狐を上回る妖だな、きっとあいつは」
笑いながら話す。
「だから俺をすみれの横に永遠に一緒にしてくれるだろう。俺は思う。
俺たちはこの世で一番愛し合い幸せな夫婦だったと」
「すみれ。きっとお前もそう思ってくれているよな」
さあっと風が吹き、すみれの花が一斉に揺れる。
満足そうな顔をして天我はそっと目を閉じる。
ともだちにシェアしよう!