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大きな手
「お前何してんだ?」
後ろから低い声の男性に声をかけられて腕を思いっきり掴まれた。
「ヒィッ。」
僕はビクッとして小さく悲鳴をあげた。
「何しようとしてんだよ?」
「は・・・放してください。」
「放したら何する気だ?」
「はな・・・ウッ・・・お願い・・・・・。」
泣きじゃくる僕を力強く引き寄せると安全な場所まで僕を引っ張って歩いた。
「そこ座れ。」
僕はその手から逃げようと泣きながらもがいたが大きな手は僕の腕を力強く握りしめたまま放さなかった。
バシッ!!!!!!
頬に痛みが走る。
何?
僕はビックリして動きが止まってしまった。
「お前、あそこから飛び降りようとしただろ?」
そうだよ。
あそこから飛び降りようと考えて立っていたんだ。
もしかしたら無意識に身体は飛び降りようとしていたに違いない。
だから今この男の人に引きずられてここに連れてこられたんだ。
「大地(ダイチ)!!!!!早くしろ。」
「わかった!!!!!!」
車の運転席からこちらに向かって叫ぶ男の人に大地と呼ばれたこの人が手を上げて返事をした。
「やばっ、いいからお前も来い。」
「えっ?」
強引に車まで引っ張られてワンボックスの車の後部座席に無理やり押し込まれた。
自分から飛び降りようとしていたけどやっぱり男の人に強引に引っ張られ連れ込まれるみたいな状況はあの時の事を思い出して怖くなる。
「頼むから間に合ってくれ。」
「間に合わせるから大地。」
何の話をしているんだろう?
2人は悪い人では無いと落ち着きを取り戻してきたらそう思えてきた。
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