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産まれる

車がついたのは大きい病院だった。 「一緒に来て!」 「はっ・・・はい。」 大地さんの凄い剣幕に僕は拒否する事とか考えれなくて言われるままに行動をしてしまった。 僕は大地さんと運転席にいた人の後ろを一生懸命ついて走った。 途中で看護師さんに注意されたけどそれどころじゃ無いと言うような感じで走る2人。 着いた先の扉の上には分娩室と表示されていて点灯が付いていた。 「間に合ったのか?」 「大地、俺窓口で聞いてくっから待ってろ。」 「ああっ・・・わりぃ。陽二(ヨウジ)」 僕はその光景をずっと見つめていた。 大地さんは祈る様に扉を見つめて少しだけど手が震えている様に見えた。 僕のお父さんもあんな感じだったのかな? 「大地、さっき中に入ったみたいだ。」 「おっ、ありがとう。」 「なんだよ。もう直ぐ親父になんだろ?しっかりしろよ。」 陽二さんが笑いながら大地さんの背中をバンバンと叩いた。 さっき灯台で僕を凄い剣幕で叩いた人とは思えないくらい弱々しく見えた。 「ふぎゃあ!」 扉の中から赤ちゃんの泣く声が聞こえてくる。 大地さんと陽二さんは嬉しそうに笑っていた。 扉が開き中から看護師さんが優しい笑顔で出てきた。 「倉橋さんの旦那さんですか?」 「はいっ」 あっ、声が裏返ってる。 「おめでとうございます。元気な男の子ですよ。頑張りましたね。」 「はいっ!ありがとうございます。男の子?えっと、女の子じゃなくて?」 「えっ?はい。男の子ですよ。」 「そうですか・・・男の子。」 看護師さんは首を傾げてまた扉の中に入って行った。 男の子と聞いてどうして暗い顔になったんだろう? お父さんも僕が産まれて男の子だって分かった時はがっかりしたのかな? 女の子が欲しかった? だから僕の名前は(いぶき)と女の子みたいな名前なの? やっぱり、僕はあの灯台から飛び降りていたらよかったんだよね。 ごめんなさい。

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