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病室
僕は何故か大地さんに手を掴まれて今、奥さんと赤ちゃんが居る病室に居た。
「大地さん。ずっと女の子だと思ってたからガッカリしちゃった?」
「ああっ、ガッカリというか・・・・・。」
「大地、あれだけ欲しがってた家族が出来たんだぞ。男の子でも女の子でもお前の家族だろ?もっと喜べよ。」
家族・・・・・。
「大地さん。その男の子は?」
「えっ?お前名前は?」
奥さんはニッコリと僕に微笑んでくれた。
「聖輝です。」
「いぶき君ね。漢字はどう書くの?」
それを聞いて何?
今はそんな事関係無い様に思うんだけどと言いたかった。
「大聖堂の聖に輝です。」
「いいお名前ね。大地がいぶき目覚める。大地さんは女の子の名前だけ考えてたのよ。大地さん、大輝(ダイキ)ってどうかしら?大きく育って輝いて欲しいわ。だから大地さんの大で聖輝君の輝くを貰って『大輝』。」
「いいんじゃないか?大地。」
大地さんは僕の掴んでいた手に力を込めた。
そうだよな・・・死のうとしていた僕の名前から1文字なんて貰いたくないよな。
「よくないです。僕は死のうとしたんですよ。今でもそうしたいです。そんな人間の名前の漢字一文字使うなんてダメです。」
病室の空気が僕の言葉で張り詰めた。
「でも、聖輝君は生きてるじゃない?何があったか分からない。『いぶき』漢字は違うけど『息を吹き返す』聖輝君は大地さんに会ってまだ生きているわ。」
大地さんの奥さんはニッコリと笑った。
「ふぎゃあ、ふぎゃあ。」
隣の小さなベッドに寝ていた赤ちゃんが泣き出した。
「どうしたの?」
大地さんの奥さんはまだ動けないのか顔だけ赤ちゃんの方に向けて話しかけている。
赤ちゃんには名前がまだ無い。
大地さんが僕を引っ張り赤ちゃんのベッドの横に立たせた。
小さくて目もまだ開いていない赤ちゃんが動いてずっと泣いている。
「大輝どうした?」
「えっ?」
大地さんは赤ちゃんの頭を撫でながら話しかけている。
どうして・・・大輝って呼ぶの?
「大輝だ。俺決めたからお前は大輝だからないいよな?」
さっきまで泣いていた赤ちゃんが大地さんの言った言葉で泣き止み寝息を立て穏やかに眠っている。
「聖輝考えろ。お前にも心配してる家族や友達いるだろ?」
心配する家族。
お父さんもお母さんも置手紙だけで居なくなった僕の心配をしているはずだ。
姉さんだって、いつも意地悪とかして来るけど僕が病気になれば心配してくれた。
でも友達は・・・・・・。
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