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腕の中で

暫く蒼大は僕を抱き締めてくれていた。 蒼大の大きな腕の中で僕は幸せを感じている。 あの時は死を覚悟していたがやはり生きていて本当に良かったと思う。 僕が蒼大の顔を見ていると優しく頭を撫でて笑いかけてくれるちょっとした事が今の僕にとっては宝物みたいに想える。 「聖輝、大丈夫か?ごめんな、怖かったんじゃないか?」 「大丈夫だよ。怖いならちゃんと蒼大に言うよ。大好きだよ蒼大。」 「俺もだ聖輝。愛してるよ。」 額に軽くキスを落とすとまたギュッと抱き締めてくれる蒼大けどねもう直ぐしたら面会時間が終わってしまう。 寂しくて泣きそうになる。 「また来るから聖輝。」 「うん。」 蒼大は僕が悲しくなっているのが分かるのか優しく言葉をかけてくれる。 ずっと蒼大の腕の中に居たいよ。 もう離れたくない。 「帰らないで蒼大。」 いつもは蒼大に心配させたくないから帰らないでとは言わなかったけれど本当はずっとそばにいて欲しかった。 怖くないなんて嘘だ。 死を覚悟したなんて嘘だよ。 蒼大から離れるのが怖くて仕方がない。 僕は蒼大にしがみ付いて声を出して泣き続けた。 蒼大はそんな僕を優しく抱き締めて泣き止むまでずっとそばに居てくれた。

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