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プロローグ
病院に着くと、相楽 はすぐに様々な検査を施され、俺はただ待つしかできなかった。
怖い。
相楽が死ぬのが怖い。せっかく二人わかり合えたのに。幸せな時間がぼろぼろと古びた写真のように崩れ去っていくようで怖い。
しばらくして、俺はとある病室に案内される。
「相楽!」
そこのベッドの上には相楽が横たわっていた。心電図と酸素マスクをつけられて。顔色は相変わらず悪い。
医者が言う。
「手を尽くしましたが、もう……」
「……そんな」
こんな三文小説みたいな展開なんてあるか。
大切な人がこんなに簡単に死ぬなんて。
「息はまだありますし、心臓も動いていますが、いつまで保たせられるかわかりません。傍にいてあげてください」
せめてもの慈悲のように医者が言う。言われなくても、相楽の傍から離れるつもりなんてない。
そう、君が死ぬというのなら──
そんなとききゅと弱々しいが、握り返してくる手があった。
「こーき、くん」
「え……」
「幸葵 くん」
はっきりと俺の名前を呼ぶ声がして、俺は顔を上げる。するとすぐにうっすらと開かれた鶯色の瞳と出会った。
「相楽……」
相楽はいつものように微笑んでいた。震える手を持ち上げ、俺の頭にぽん、と置いた。
少し息苦しそうにしながらも、相楽は続ける。
「泣かないで」
俺は今、泣いているのだろうか? そう思っていたら、相楽の指が軽く目元の雨滴を掬った。
泣いていたらしい。けれどこれが悲しくなくて、何が悲しいというのか。
「相楽、相楽……」
名前を呼び続ける。呪文のように。まるでそうすれば、生き延びてくれるとでも言うように。
相楽は儚く微笑んだ。
「あい、してる……」
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