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楽しい悪ふざけ
坂田時夜と不知火善は、元よりさほど親しいわけではなかった。
というのも、単に不知火は嫌がる相手を苛めるのを趣味とする、いわゆるSっ気がある性分で、坂田も自分と似たり寄ったりだと勘が告げていたためである。
苛めに行こうものなら返り討ちに遭うことが目に見えていたので、あくまでもただのクラスメイトとして関わるに止めていた。
その関係に変化が訪れたのは、坂田と不知火のどちらとも友人付き合いをしている黒河香織の何気ない発言がきっかけだった。
「時夜と善って、どっちも綺麗な顔してて、でも彼女とか浮いた話は全然ないよね。いっそお似合いだし、二人ができちゃったら面白いよね」
冗談とも本気とも取れない顔つきで言われ、不知火もそれに乗ってみることにした。
「いいねそれ。面白いかも」
「でしょ。できたら教えてね」
黒河はその場限りのノリで言ったのかもしれないが、その一言で不知火は坂田に絡むようになった。
その日、不知火は坂田に接近すると、わざわざ体を密着させた。
「不知火。なんか妙にくっついてくるのは何故だ」
怪訝な顔をする坂田に対し、不知火はわざとらしく甘えた仕草で寄りかかる。
「ん?まあ見てなって」
耳元で囁き、腕を絡めたりしていると、そこに通りかかった女子の一人が黄色い声を上げた。
それを横目に、坂田に悪戯っぽく笑いかけると、坂田は何を思ったのか、いきなり肩に手を回してきた。よもや意図を察して悪のりに乗じてくるとは思わなかったのだが、坂田も満更でもなさそうな顔つきで不知火を引き寄せると。
「ちょっとどこ触っ……」
なんと不知火の双臀に触れてきた。一瞬本気で焦ったが、坂田の顔にしてやったりという笑みが浮かんでいるのを見て、やり返すことにする。
「へえ、いいブツ持ってるね」
先ほどからギャラリーが増えてきているのを感じながら、わざと周りに見せつけるようにナニを撫で回してみた。狙い通り、仕返しには成功し、ギャラリーが盛り上がる。坂田が息を呑む気配がして、楽しくなってきた。
しかし、これは女が放っておかないだろうと思うが、万一でもこんなサイズに突っ込まれるのだけは避けたい。もっとも、いくら周りへのサービス精神でふざけて見せても、そこまでやる必要はないため、悩む必要もないのだが。
「お前も細い割には、いい締まりだな」
坂田もこの余興を楽しみ出したのか、過剰なお触りを続ける。
これまでろくに話したこともなかったにも関わらず、阿吽の呼吸でおふざけを続ける二人は、それ以来、校内でも有名な「名物」となるのだった。
ただし、誤解があるかもしれないが、少なくとも不知火はそっちの気はない。坂田も男同士で女子に関する下品な話に乗じることがあるため、恐らくないだろう。
これはあくまでも、新しい遊びの一環で、相性が悪いと思っていたS同士で何が起こるのか楽しみに思っていた。
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