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嫉妬は恋の始まり
一度坂田と体の関係が出来ると、そのままずぶずぶと互いに溺れていった。気持ちが伴わないセックスがこれほどいいものだったのかと思うが、それは相手が坂田だからかもしれない。
時には駆け引きを楽しんだり、色んなプレイに乗じたり、坂田を言いくるめて無理矢理抱いたり、仕返しに抱かれたりと、この関係に飽きがくるどころかますますはまっていった。
(注意 以下は、「事実は小説より奇なり」の3 お近づきの印にを読んだあとに読むことをおすすめします。)
「坂田とあんた、付き合ってるんですか」
そう夏本という男に言われた時、思わず笑ってしまったのは、複雑怪奇だというのは本当だが、不知火にも分からなかったのもある。
体の関係だけであれば、セフレとも言えるのだろうが、それだけではないとどこかで訴えかける声がする。
坂田が初めて苦手意識を持った人種の暁という男に、どうやら嫉妬してしまっているようだと気が付くと、笑うしかなかった。
苦手だという坂田の感情さえ、全て自分が独占したくて堪らない。それなのに、素直に坂田に気持ちを告げることも出来ずに、「お近づきの印に」とか言いながら、坂田の弱味を探っている振りで暁に近付いた。
暁のようにすれば坂田を独り占めできるだろうか、それとも坂田は少しでも嫉妬してくれるだろうか、とくだらない考えが頭を占めてしまう。
しかし、夏本という番犬がいる限り、暁にはこれ以上近付けそうもないな。何かいい案はないだろうか。
「おい、不知火」
我に返ると、坂田が不知火の体を弄るのを止めて、苛立ったように見ていた。
よりによって坂田との行為の最中に考えに耽ってしまっていたことに思い至ると、内心焦りながらも軽い調子で謝る。
「ごめん、ぼーっとしてたみたい」
「何を考えていた」
「え?えっと、何だっけな」
いつものような上手い言い訳が浮かばずに、不自然に視線を泳がせると、坂田が顔をぐっと近付けてきた。
「他の男のことでも考えていたんじゃないだろうな」
一瞬言葉に詰まったのは、図星をつかれたからではない。今まで触れなかったその唇に口づけてしまいたい衝動に駆られたからだ。
「何それ、嫉妬でもしてるの?」
衝動を抑え込み、掠れた声で笑いながら訊くと、大真面目な風で坂田は言い切った。
「当たり前だろう。お前は俺のものだ。他の奴にはやれない」
まるで告白めいた台詞に、顔を赤くしてしまいながら、先を越されたなと呟いた。
「何か言っ……」
今度は衝動を抑えることを止めて、声を塞いでやったら、坂田はすぐに応じて濃厚なものになっていった。
言葉よりもこっちで伝える方が自分達らしいが、たまには伝えて驚かせるのもいいかもしれない。行為に雪崩れ込みながら、愛を囁いた時の坂田の反応を想像し、一人密かに笑みを浮かべた。
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