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彼氏
RRRR……
「ナオ兄、電話鳴ってるよ」
ー着信 夏陽ー
「彼氏?」
「…………うん」
夏陽とは大学の頃から恋人同士。
一緒に暮らしてて2年の付き合いになる。
「もしもし?」
『ナオト?お前、今、どこ?
なんで家にいないんだよ』
「弟の家だよ。前に言っといただろ」
『知らねぇ。今すぐ帰ってこい』
「…………分かったよ」
こんな事は日常茶飯事。
…………一応、恋人同士。
だけど、俺達は対等じゃない。
何故なら…………
俺達はα とΩ 。
対等なんて言葉はあまりにも似合わない。
弟達は夏陽の事、良く思ってない。
夏陽が典型的なαだからだ。
夏陽は浮気をする最低彼氏だった。
「俺、今日は帰るね」
電話を切り、弟達に伝える。
「えー!?また!?」
「彼氏、心狭いなぁ。
自分は浮気ばっかりの癖に!」
「弟の家もダメなの?」
「信用してないんだろ。どうせ」
「αって、本当に勝手!」
弟達は納得いかないみたいに、怒ってる。
俺だって理不尽だな……と思う。
でも。
「…………αだからだろ?」
彼氏、夏陽 はαである。
隠すことなく自分は浮気してるくせに、俺に対して束縛が激しい。
別に珍しくもない。
いや。αとは、本来そうなのだ。
プライドが高くて縄張り意識が強い。
自分勝手、強引で傲慢な性格。
絵に描いたような典型的なαぶりに、弟達は
いつも『早く別れたらいいのに』と言う。
…………この恋はダメだ。
俺だってそう思ってるよ。
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