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さらにその後の佑×冬樹

   疲れた顔をしながら(そうさせたのはオレだけど)佑の弟は帰っていった。  疲労困憊の弟を放っておけず、タクシーに乗るところまでを見送ってきた佑とふたりきりになった室内で、オレは沈黙に耐えきれずその場に土下座した。 「それはもういいって」  呆れた様子でため息までつかれてしまい、オレは上体を起こして佑を上目に窺った。  つい先ほどまではゴミを見るような目をしていたが、リビングのソファに疲れた表情で腰をおろす姿は常と変わらない。本当にもう怒っていないのか、オレのことを見限っていないか。拭えきれない不安を抱え、佑の足元に膝でにじり寄って頬をすりつければ、どうしようもない駄犬を相手にする手つきで撫でられた。 「おまえがここまでアホだということを忘れていた俺も悪い。いくら部屋が暗かろうと、どっかの時点でおかしいと感じるべきことをスルーしちまうのがおまえだもんな。一度そうと思い込んだら、とことん信じ込んで自滅しちゃうおまえに多くを求めすぎたら駄目だよな」  散々な評価に肩を落とすも、事実その通りなので反論は控える。もとより佑に口答えする意思など存在しないのだが。  佑の膝に頭を乗せて、反省の色を見せつつ甘えてみる。機嫌が悪ければ払い除けられるが、意外にもそこまでご機嫌斜めではないようだ。ボサボサになった髪を指で梳かれ、その心地よさに調子づく。  佑の膝に甘えたまま、手を伸ばしてスラックスの前立てに触れた。 「佑ぅ……おしおき、しないの?」  自分でも見事な変わりようだと思う。普段は見かけにそぐわぬ粗野な口調を貫いているが、佑に可愛がられるときだけは素の甘ったれた性根が顕著になる。それだけ佑を信頼し、彼に依存しているということだ。こいつがオレを繋ぎとめてくれている限り、オレは他を向かないしこいつだけの犬であり続ける。 「おまえ……そんなにお仕置きされてぇの?」  薄ら笑いにかすかな情欲を滲ませ、佑がオレのあらわになった耳たぶを指でつまみあげた。  すりすりと、指の腹で揉むようにされて、あっという間にオレの股間は膨らんでいく。さっきから随分とおあずけを食らわされていたから、オレの期待値と興奮は天井知らずに高まるばかりだった。  はぁ、と吐き出す息が熱く湿っている。自分の手で着ているシャツの前ボタンをはずし、開けっ放しのジーンズのフロントから頭を覗かせるペニスに爪を立てた。 「ぁっ……、して……ほし……っ」  ――――欲しい欲しい欲しい。全身が渇望している。今すぐここで佑に犯されたいと。  オレがおまえの弟にしたこと以上のことをしてほしい。打っていい、殴っていい、辱しめていい。なにをしたって構わない。佑になら、オレは殺されたって文句は言わない。  ◇◇◇  全裸になって、佑の勃起をしゃぶらされた。犬のように四つん這いで、涎まみれになりながら口だけを使って育ててやった。  佑のものはオレよりも大きくて、硬くて、長くて熱い。同じ男であることが恥ずかしく思えるほど立派なそれを含んでいると、次第にその熱に溶かされたように口の中がドロドロになっていく。佑はその変化を味わうのが好きで、オレによく口淫を求めた。オレも佑のをしゃぶるのが好きなので、オレたちは中々お似合いのカップルなんじゃないかと思う。  ぼこぼこ浮いた血管を舌先でなぞり、雁首をグルリと一周して亀頭をチュッと吸いあげる。そうすると佑は太ももを痙攣させて、オレの頭を押さえ込んで喉奥を突いてくる。歯を立てないよう細心の注意をして喉を開き、嘔吐きを我慢して咽頭(いんとう)で扱いてやると、佑は色っぽい声を漏らして吐精した。  粘ついた体液が食道を伝っていく感触に恍惚としつつ、うしろ手にほぐしていた後孔に佑を迎え入れるため、萎えたものを再び大きく昂らせていく。  挿入までの下準備はすべてオレの仕事だ。佑にほぐされると感じすぎてイキっぱなしになってしまうので、さっさと中に入れたいときはオレが率先して動く。佑がオレのいいようにされている姿を堪能できる、短いながらも至福の時間だった。 「ぁ、はぁ……ああ、すごい、おっきい」 「見惚れてないでさっさと入れろよ」  支えがなくとも天を衝く佑のものに見入っていると、頬を叩かれて促された。ソファに深く腰を沈めた佑の膝に乗りあがり、位置を定めて体をおろしていく。 「あ、はあぁ……ひゅごいぃ、ひもちい、きもちぃよぉっ……」  口角からだらだらと唾液がこぼれていく。オレのペニスもびしょ濡れで、上も下も呆れるほど大洪水の大喜びだった。そんなオレを、佑が濡れた眼差しで見守ってくれている。 「あはぁ……っ、たすくっ、気持ちい? オレのっ、オレのなか、気持ちいいっ?」 「……っ、もっと動いてくれたら気持ちいいかもな」 「ぅんっ、うんっ、動く、動くよっ」  目の前の上気した顔を眺めながら、オレは必死に腰を振って佑の性感を高めていった。それは同時にオレの性感を高めることにもなり、佑を置いて果てそうになるのをどうにか堪える。 「はぁっ、ああっ……やばい、オレいっちゃいそう……!」  かぶりを振りながら告げた瞬間、オレのだらしないペニスの根元が、佑の大きな掌に鷲づかまれた。痛みを覚える握力で戒められ、悲鳴なのだか喘ぎなのだか判別つかない声をあげて身悶える。 「俺の許可なくイこうとするな……っ」  ペニスをギリギリと戒める手の力が強まり、腰をグラインドして腸内を荒らされると、受けとめきれない快楽の奔流に呑まれて、冗談でなく絶叫させられた。  力強い突きあげに振り回され、すがる先を求めて指先が宙を掻く。その手をつかんで引き寄せると、オレをその身にすがりつかせた佑は、本能に突き動かされるままに律動を開始した。  腰を抱える指の食い込む痛みに胸が狂おしいほど震える。尻に熱杭を打ちつけられるたびに体が跳ね、すかさず引き戻そうとする逞しい腕に興奮を煽られる。秀麗な顔が汗にまみれ、ときに苦しげに、ときに耽溺して歪む様に幸福を味わった。  ……ああ、好きだ。佑のことが好きで好きでどうしようもない。人から頭がおかしいと言われようと、オレは佑を全力で愛するし、なにもかもを捧げようと心に決めていた。  佑から同等の愛をもらえないのは理解していたけれど、それでもオレはこいつをひたすら愛し続けるのだろう。  佑がいればいい。オレの生きる醜く穢れた世界にたったひとり、こいつさえいれば生きていける。佑に抱かれている瞬間が、一番しあわせ。 「ああったすくぅ、たすくっ、して、おしおきしてっ」  ぶっ飛んだ頭で舌足らずにねだれば、佑が口角をつりあげて悪辣に笑った。 「気持ちよさそうにとろけた顔しやがって……そんなに欲しけりゃくれてやるよ」  壊れた蛇口みたいに、押さえる意味もないくらい粘液を垂れ流す場所から離れた佑の指が、オレの首に伸びて喉仏を探った。  固い骨を避け、やわらかい部分に親指をじわじわと食い込ませて顔を覗き込まれる。 「あ、あ……もっと、もっとして……」  佑の掌は大きいから、片手でも十分首を絞めてもらえる。  咳き込むのも構わずもっともっとと求めると、佑が今日一番の優しい顔で口づけてくれた。 「苦しいか……?」 「か、ぁは……っ」 「苦しいだろ、冬樹」  心配そうな口調を装う彼が、今どんな表情でオレを見つめているのか知っている。  オレは涙でかすむ視界の中、ぐるぐる目を回して佑を捉えようとした。体はこんなに熱いのに、不思議と手足の末端が寒い。 「冬樹」  ようやく見つけた佑は、すぐ目の前にいた。 「ごめ……、おし、おぎ、なのに……おぇ、ぎもちくって、死んじゃいそぉ……っ!」  豚の鳴き声もかくやと言う声で正直に伝えると、佑は心の底から満足そうに破顔した。 「死んでいいよ」 「ぁ、ぐぅ……っ」  圧迫感が強くなる。息がまともにできない。苦しい、苦しい。息ができなくて苦しい。 「ふぁ、あぁ……ん」  それなのにメチャクチャ気持ちよくって、オレは白目を剥いたまま盛大にいろんな体液を撒き散らしていた。  意識が途切れる寸前、体の奥で佑の迸りを感じる。  耳元で佑が呟く。オレを可愛いと誉めるその声が、いつか最期に聞く声であればいいと思う。  終わり

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