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第1話・彼の代わりを探して。

 ◆  煌々と照らされた明かりの下で、市野 綾人(しの あやと)は呼吸する時間さえも惜しむように、差し出された薄い唇に無我夢中でしゃぶりつき、細い両腕を相手の首に巻き付けた。 「綾人……」  男の色香を放つ、くぐもった低い声が綾人の名を呼ぶ。  二人きりの一室に響き渡るその声に、綾人の感情は焼けるように燃え上がった。  綾人は、いくら運動をしてもまったく筋肉がつかない華奢な身体をベッドの上で披露し、彼を迎え入れる。  枕の上では繊細な色素の薄い、肩まであるやや長めの髪が散らばる。  陶器のような白い頬には赤みが差し、長い睫毛に縁取られたはしばみ色の目に溜まる涙は真珠のごとく、とても美しい。  その姿はとても扇情的(せんじょうてき)だ。綾人を組み敷く彼は艶のある綾人に(はま)っていく。  しかし、それは綾人と同じ性癖がある相手にこそ通用するもので、男の綾人は一般的に同性には受け入れられない。  綾人は女性を恋愛対象として見ることができない性癖を持っていた。  だから自分の想い人である人にこの想いを受け入れられないことを知っている。  綾人は四年もの間、ずっと想い続けている相手がいた。  綾人の恋の相手は親友で、しかもノンケだ。  親友の側にいるためには、この恋を隠し通さなければならない。この性癖で嫌われることを嫌う臆病な綾人は恋を告げることさえも許されない。  ――それはあまりにも辛く、悲しい。  恋とは非常なもので、自分の気持ちを理解すればするほど、その想いは募っていく。  綾人は恋しているその人の隣で自分の気持ちをひたすら押し隠し、日々を悶々と過ごしていた。

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