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第1話・スキナヒト。
そんなある日、綾人は自分の気持ちを隠すはけ口となる場所を探すことにした。
それが今行きつけになっているこのバーだ。
バーは大学から二駅ーー帰路に着くまでの距離にある。
人通りの少ないひっそりとした裏道の一角ーー『EN-COUNTER』という名の、まさにその名通りの出会いを目的としたバーだ。
そこには綾人と同じ性癖を持つ人間が多く集まっていて、彼らは一夜を共に過ごす相手を探し、集うのだ。
そして綾人もまた、『EN-COUNTER』に通い詰め、恋心を寄せている彼とどこかしら似た男性 を探し、毎夜こうしてぬくもりを求めていた。
一重の目や尖った顎。襟足まで届くか届かないかの黒い髪。それから面倒くさそうに前髪をかき上げる仕草だったりーー。
自分とは違う、がっしりとした肩幅をしていたりーーと、一部分でも彼に似ている相手なら誰でもよかった。
どう足掻こうと、本命とは両想いになれないことを知っている。
だから綾人はこの方法でしか自分を慰める術を知らない。
恋心を押し殺すため、自分さえも偽り続けていた。
「綾人……」
好きな人の声に似たその男性の薄い唇が、手が――綾人の身体を蹂躙する。
「んっ、ああっ」
長い指でツンと尖った乳首をなぞられれば、赤の唇から甘いため息が放たれる。
綾人を組み敷く男は、綾人の艶のある声をもっと聞きたいと思ったのか、果実のように赤く尖っている綾人の乳首を執拗にこね回しはじめる。
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