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第1話→sideH
自分でもカッとしてしまうと怒りを制御とかできねぇ。それは、生まれたころからの性分で、一生改善とかされねーんだろうと諦めちゃいる。
後悔なんかするはずもねぇんだが、住むところもなくダチの家で養われている状態には、やはり思いとどまった方が良かったかもしれないとは思う。
大体、上司とか言う奴が上から四の五の言ってくるのが気に食わなくて、思わず軽くだがぶん殴っちまった。
ちょっと鼻血吹いたくらいなのに、警察呼ぶとか言い出すしホントに訳が分からなすぎる。
俺が会社をクビになることで、警察沙汰まではならずにはすんだ。
そんでも道を外せば、俺にも仕事をくれるっていうツテは先輩とかからはいくつかあるんだけどなァ。
厄介なのは、居候先の幼馴染みがそれをやったら縁を切るとか言うんで何となく躊躇している。
なんせなんやかや世話になってるし、まあ、10年以上一緒につるんでる訳だし。
俺もその縁を切られるのは、なんだか心許なくなる。
客引きの仕事も、週末の金曜くらいしかねーし。暇すぎて死にそうだ。
ガチャと鍵の開く音がして、少しよれよれになったスーツ姿の幼馴染みが入ってくる。
「おォ、おかえりー」
パラパラとエロ本めくりながら玄関口へ視線をやると、疲れた表情で幼馴染みは部屋の中に入ってくる。
幼馴染みのライトこと、ライは、中古車専門のセールスをやっているらしく、もう半年たつけどクビにはなってねーから奴は頑張っているんだろう。
「ハルカ、今日は?何してたんだ?」
俺の名前はハルヨシなんだが、遥佳と書くのでライは俺をハルカと呼ぶ。
「エロ本読んでちょっとシコったり、後輩のヤツらとLINEしたりしてたし。あ、LINEでヤレそうな女の子物色とかなァ。ハメ撮りでもして、うまくゆすれたら儲けじゃね?」
非常に非生産的な1日だ。
オマエとは全く違う。
社会に必要とされているオマエと、俺は生きている意味すら違ってるんじゃねーかと思ってる。
「キャハ、あーね、ちょっとダケ部屋ん中いか臭い気がしたァ。俺も外回りばっかだったしなぁ。イイオンナいた?」
「不作、不作。ニートには興味ねーみたい。オマエどっかツテねーの?ちんこ腐りそう」
「ポロッと落ちそう?キャハ、ハルカは相変わらず下品だよなァ。そろそろ実家にはかえらんの?」
意外にも、ライは俺に実家に帰れのサインを出してくる。
そりゃ、こんな居候がいつまでもいたらライも女の子連れこめねーしな。
「作業場を壊されてから、もう絶縁状態だしなァ。ライ、もう俺出てった方がいいよな?」
もう、2ヵ月半近くライには世話になってる。
そろそろ、なんとかしなきゃいけないのは、わかってる。
「なーによ、キャハハッ、ハルカらしくない。好きなだけ居ろよ」
金さえとらないし、むしろ俺のがライから小遣いとか貰っている状態だ。
「ってもなァ、カネも入れてねーしなぁ」
「ふうん?気にしてんの?マジで、らしくねー」
からからと笑いながら、ライは俺の近くにくると、冷蔵庫から持ってきたビールを頬にくっつける。
「ッ、つべて、オマエ、冷たい!」
「じゃあ、体で払うのもアリだけど。俺もたまってるしー」
イタズラっぽく俺に提案するライの表情に俺は一瞬かたまる。
確かに、高校ン時は男をヤッたりしたことはある。
まあ、それもなんつーか縄張り争いの中の力を示すためとか、まあ、俺の片思いからのってのもあったが、自分にそれが降りかかるとか考えたこともない。
「そりゃ、勘弁。土方の仕事でも、探すわ。でもどっかでゆすりたかりできる楽な商売ねーかなァ」
「ぶははは、断られたよ。けどよ、ハルカ、絶対に裏稼業には関わるなよ。関わったら、本気で縁切るからな」
笑いながらも、俺を見る目つきは真剣でちっとも笑ってなかった。
それから、1ヶ月もたたず、俺は奴の忠告を無視して奴の家を出ると、裏の商売に手を出した。
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