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第14話→sideH

身体が落ち着くまでは安静にということで、事務所の脇の部屋に監禁されていた。 飯ももらえたし、監視付きではあったがあんまり不自由はなかった。松川さんの家に居た時もこんなもんだったかもしれない。 「おい、ハルカ。若頭がきたから挨拶すんぞ」 エーゴさんは、ドアを開けてソファーで寛ぎまくっていた俺に声をかけた。 若頭とか、なんか映画みてぇだけど、やっぱそーいうのってあるんだな。 Vシネじゃあるまいし、とか、心のどこかで考えていた。 エーゴさんの言葉に俺は立ち上がり、後ろについていく。 まあ、俺は逆らおうとか逃げ出そうとかすでに考えることもやめていた。逃げ帰る場所もない。 黒いスーツを着たいかにもという貫禄とオーラを背負った男が、事務所の上座のソファーにでんと腰をかけている。 思ってたより若そうで、40台半ばくらいの鍛えられた体つきの男だった。 「河島、このガキがあの取引をパーにしたヤツかい」 「佐倉さん、そうです。単独じゃなくて末端だったみてーで、逃げた奴らの情報は聞きだせなくて」 「ふうん、生意気そうなツラしたガキだなァ。で、身体で払うってか」 男は立ち上がって、俺に近寄ると2mはありそうなでかい体を屈めて俺の襟首を掴む。 「もう、肝臓一つは売ったんで、あとはアンコになって稼いでもらうしかねーかと。見た目はべっぴんには遠いんで、マニア方面向けになっちまうかもしれねーんですけどね」 エーゴさんが説明をいれるが、俺は鷹のような目で睨み降ろされて生きた心地もせずに見上げる。 「ハッ、大した玉のガキだな。このワシを見返せるとは。こんなガキのアンコウ売るなら、ちょいと躾しねーと無理だろなァ」 男はそのまま俺の腰を掴んでグイッと肩に乗せて担ぐ。 「ちょっ、なんだ!あ、なあ」 「死にたくなきゃあ、黙っとけ」 男は、そのままスタスタ歩いて事務所を出る。 「どこ、いくんすか!?」 そうだ、この男は組の若頭って呼ばれていたっけ。 一応敬語使った方が得策だろう。 「ワシらも、手っ取り早く元金回収したい。オマエも、早く自由になりたい。利害は一致だ。違うか?」 「違くねぇ、す」 「客を取るには、それなりに価値が必要だからな。価値と技術を取得してもらわねーと。なんでも、ライセンスってのは必要なんだぜ。社会では」

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