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第48話→sideH
出された朝飯を口にして、さっぱりとした味付けは肝臓を一つ失くした俺を気遣っているなと、凄く感じた。
返すものも何も無い。この身体もオカシクなってて負担をかけると考えて、どうしていいのか分からなくて不安だったのに、ライからずっと俺を好きだったと聞いて気持ちが軽くなった。
こんな体の世話をさせるのに、ダチとか幼馴染みの腐れ縁での情けをかけられるのが嫌で仕方がなくて、ここに戻るのも嫌だった。
俺を好きだといって、ライが俺を喜んで抱くのなら、その代償として恋人にしてやろうと思った。
もう、片思いしていた相手のことはどうでも良くなっていたし、命を懸けて取り戻しにきたと言われて、気持ちが動かないわけはない。
そこに、恋心とかあるかどうかは、また別の話だ。
ライとは一緒にいるのが、当然過ぎて今更っていうのはある。
「…………ライ、飯、うまいな」
口に運んで咀嚼した後に、そう告げると、ライはぱああっと表情を明るくして、糸目を更に細くして照れたように笑う。
こんなふうに俺の一挙一動に、喜怒哀楽を表していたというのに、まったく気づいてやれなかった。俺がやって欲しいと言えばどんな汚れ仕事でもした。
考えてみれば、幼馴染みだからって犬のように扱いをされて、嬉嬉としてこなすなんてマゾでもなきゃないわな。すべて恋心だというのなら、納得がいく。
こんなんでも、ヤツの気持ちに報いてやれるなら、それもいいだろう。
「…………あんまり固形物食べてなかったって聞いたからよ……米もやらかめにしたんだけどな」
「ああ、わかる。病人でもねえけど……そういうの、嬉しい……ありがとう」
あまり感謝も伝えたこともない。
ライが俺のために色々してくれんのは、当たり前すぎて、感謝とか考えたこともなかった。
ライが細い目を見開いて俺をビックリしたように見返してくる。
「…………な、なんだよ。オカシイかよ…………なら、もういわねえ」
気恥しさに思わず勢いで怒鳴ると、ライは慌てたように首を横にブンブンと振る。
「いや、嬉しすぎて……俺やべえわ」
泣きそうな顔をするから、思わず頭をくしゃりと撫でてやりたくなる。
「泣くんじゃねえよ、バカ」
真っ直ぐに好きだと全身で言っているライに、俺は気持ちだけでも、返してやれるのか。
少しだけ、何故か胸の奥の深いところが痛んだ。
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