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※第52話→sideH
昨晩のような鬼畜めいた激しさはなかったが、身体中を侵食されるように抱かれて、俺は全身の疼きにたまらなくなっていた。
この男に犯されたいという、痛烈な感覚と欲求。
わけがわからず、俺は泣きながら胎内深くに欲しいとあさましい言葉を口にしてライを求めた。
そして今羞恥にかられと激しく後悔しながら、ライが甲斐甲斐しく俺の身体を拭いているのを、ぼんやり眺めている。
まあ、誘ったのは俺だし、恋人にしてやったんだし、今更恥ずかしいもくそもねえ。
「…………ライ、もう、いい……くすぐってえ……」
足の指咲まで丁寧に拭き始めたライに、俺はたまらず呟く。
「なんたよ、感じちゃう?」
笑いながら拭くのを素直にやめて、ライは俺の腰を掴んで下着を着せる。
「…………そんなんじゃ、ねーけど。なんか、変だ。オマエ、付き合ってた女にそんな優しくなかったじゃねーか」
「付き合ったオンナとか完璧カムフラだしなァ。ハルカしか好きじゃなかった」
ぼそりと呟き、元々細い目を細めて笑うと俺の隣に座って抱き寄せてくる。
幼稚園の頃からとか、なんともしつけー話だ。
「ハッ…………俺にそんなこと言っていいのか。調子にノるぞ。男が欲しくて仕方がないカラダだから、オマエで手を打ってるだけかもしれねーのに」
実際、多分、きっとその通りだろう。
ライが好きなのかと聞かれたら、そうだとはすぐには言えない。
真壁を好きだったが、それをまだ引きづってるわけではない。
ライは目を伏せて俺を抱く腕に力を込める。
「…………そんでも構わねェ。一生……諦めてたから」
俺に対してはいつでも犬のように従順な狩猟犬で、他には全くなつきもしない狂犬で。
俺は、薄い色素のライの髪をわしゃわしゃと撫でる。
俺をまるでオンナのように抱いたその体を、ライは簡単に預けてくる。
そのうち、観念した方がいいのかもしれねーけど、まだ、俺にはわかんねえんだ。
「…………ふうん。なんだよ。やっぱしカラダだけってなら、セフレにしとくけど。折角、恋人にしてやったのに、オマエは俺のココロとかは欲しくねーのかよ」
ライの態度にイライラしてきて、思わず爪をガジガジ齧る。
ライにいらついてる。なんでも構わないとか言われたくねーのか、俺は。
好きじゃない癖に、相手には求める。
まじで、クソな性格だな、俺は。
「欲しい、そんなの全部欲しいに決まってンだろッ」
ガッツリと抱きついてくるライに、俺は優越する。
その言葉がほしくて仕方がなかった。
あー。そうか。
俺は自分がライ以上の愛情をライに対して持つことを警戒してんのか。
カラダで求めて、欲しいと言わされたことを根にもってんのかな。我ながら、ホントに勝気な性格だ。
「オマエはもっと俺を欲しがれよ。そしたら…………たぶんいつかはくれてやるからさ」
ライの頬を撫でて告げると、ライは俺を抱き締め返して何度も頷いた。
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