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第53話→sideRT
五十嵐さんの店に、今回世話になったヤツらを集めてお礼をかねた食事会をすると言ったら、絶対に嫌がると思っていたハルカは意外にもすぐに行くといった。
礼とかするのはかなり苦手だと思っていたのだが、そこは、やはり命もかかっていたこともあるだろう。
まあ、排泄とかのこともあるし置いていかれるのも嫌なんだろうな。
俺の持っている中でも少しサイズの大きい服を渡して着替えさせたが、やはり窮屈そうだ。
明日は日曜だし服とか買いに行って用意しよう。
なんだかんだ、支払いも思ってたより少なかったのもある。長谷川弟が若頭にタダにしようよとゴネてくれたのだが、それも禍根を残しそうだったので断ったのもある。
もっとかかると思ってたから、少しは余裕がある。
「ライ?…………なんだよ?」
じっと見つめすぎたのか、眉を寄せてハルカはギリッと睨んでくる。
「いや、やっぱ服が窮屈そうだな。明日は、一緒に服を買いにいこうな」
「まあ、オマエのだし、サイズちげえし仕方がねーよ。カレシャツってやつだ」
それは、ちょい使い方が間違いだ。ブカブカしたやつで可愛いってイメージの言葉じゃないか。
でも、そういう言葉にすごく嬉しくなる。多分ハルカも意図的に言ってるんだろう。
きゅうきゅうパンパンのカレシャツか。
まあ、ハルカだし可愛いんだけどな。俺には。
「聞いたけど五十嵐さんの店は、ハルカは行ったことあるんだろ?」
「松川さんに連れてってもらった」
ぼそりと呟き、少し眉を寄せてギュッと拳を握りしめる。
あ、聞いちゃダメだったよな。
裏切られた挙句、松川さんは殺されたんだよな。
「悪ぃ」
「いや、あの人は最初から俺をシッポに使う気だった人だ。あの仕事が終わったらこっちから手を切るつもりだったし。…………別になんにも思ってねーよ」
嫌なキモチなのは確かだろうが、ハルカはそれ以上何も言わなかった。
車から降りると、ハルカは落ち着かなそうにあたりを見回す。
実際今回助けてもらったヤツらは、ついこないだまで抗争していたいわば敵なのだ。
そりゃ、色々気まずいのは確かだし、浜田に報告した時もそっちに相談かけんじゃねーとも怒鳴られたが、就職きっちりしてる奴らにヤクザに乗り込む話は持ちかけたくなかった。
俺は、ハルカの肩をとんと叩いて、アメリカ風の店の扉をあける。
「こんばんわ」
「おー、峰。小倉の奪還成功、ホントに良かったな!」
五十嵐さんは、カウンターから顔を出していかつい顔で満面の笑みを浮かべる。
「お陰様で、ホントに世話になりました」
「ありがとうございます」
背後からハルカが頭をさげて、礼を言う。
あんなにも頭を下げるのが嫌だったハルカが、礼を言うとか、人間やろうと思えばできるんだな。
「いや、まあ、元はコーキが仕出かしたことだしなァ。小倉が巻き込まれちまったのは、ホントに災難だしよ。ホントに良かったわ」
卒業しちまっても、自分のとこにいた人のことをこんなふうに言えるのは、やはり五十嵐さんのカリスマ性は凄いなと思う。
こんな風に、自分の下についていたヤツらのことを、多分ハルカは考えないだろう。
「将兵は、もうついて個室で食ってる。士龍達は、予備校が終わったら一緒にくるってさ」
個室を指さすと、五十嵐さんは先に食ってなと声をかけた。
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