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第55話→sideRT

真壁は、一瞬驚いてきょとっとした顔をしたが、目を細めて嬉しそうにふと笑うと、 「無事にハルちゃんが戻ってきて良かったぜ。俺も負傷した甲斐があったな」 言いながら制服を脱ぐと、痛々しく肩に包帯が巻かれている。 まあ銃で撃たれたわけだし、ちょっとした怪我ではすんではいないだろう。病院に顔がきくやつで良かったのだが。 「何を礼したらいいのか、わかんねーんだが…………」 眉を寄せて不甲斐ないとばかりにハルカは呟く。 「いーの。礼のためにしたことじゃねーし。それに、結局のとこ、うちのとこの子が若頭と知り合いだったから、運良く融通きいたしな」 真壁は説明するのが面倒になったのか、今回の功労者である長谷川弟の腕を引いて自分の隣に座らせる。 「あ、あの、おぐら先輩、今回は大変な目にあったのは、ごめんなさい。俺のパパが、その、えーと、うーんと組のボス的なやつでして」 一生懸命なのだが、言っていることがなんともわからない。こいつからはハセガワのような威圧感も全く感じない。 気の弱そうな感じなのだが、真壁いわく真壁よりも強いらしい。 「真壁、…………まったくわかんねーんだが」 ハルカはイライラをぶつけることも出来ずに爪を噛んでいる。 「この子はうちの1年で、あそこの支部の若頭の佐倉さんの息子なんだよ」 「サクラ…………ああ、トラさんか」 ハルカは男はつらいよ野郎だなと独り言を漏らし、どこか緊張した様子の長谷川弟を見下ろす。 「ふん、似てねーな」 「俺、長谷川北羅っていいます。おぐら先輩」 とりあえずキツめの目を細めて愛想よくにっこり笑ってみせる長谷川弟には、邪気はない。 「キタラか。…………世話になった。オヤジさんは苦手だけどな」 ハルカも、真壁の説明にようやく理解して、功労者に礼を言った。 「パパは俺には優しいんだけど、アニキの事とかは気絶するまで張り飛ばしたりするんで、そういうの見るとこわいかな」 ハルカは感謝の意味を込めてかわからないが、長谷川弟の手を軽く握って頭をさげた。 「ありがとう」 「ついでに言うと、あの北高のハセガワの弟だから」 俺が耳元で囁くと、ハルカは信じられないとばかりに目を見開いたが、しみじみつぶやいた。 「まあ、サクラのトラさんがハセガワのオヤジというのは、充分わかる話だな」

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