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※第60話→sideRT
何度も身体を打ち付けて欲を吐き出し、ハッとして我にかえるとハルカはぐったりとしていて、呼吸は止まっているのに気が付き手を首から離す。
首には昨日の比じゃない鬱血のあとがあり、必死にもがいたようにハルカの掴んだシーツは破れている。
俺が、絞め殺したのか。
俺は慌てて体を離してペニスを引き抜き、焦って耳を胸に押し当てると、心臓はまだかすかに動いている。
ドッドッドッと俺の心臓が激しく脈打ち、冷や汗が額からダラダラと垂れ落ちる。
ハルカの鼻をつまんで肺を叩くように押し込みながら、人口呼吸を繰り返す。
こ、ころしちまった…………。
悪夢のような光景に、心臓が凍りつく。
焦るこころに、汗が全身からだらだらと溢れでる。
どうしたら、いい。
必死で胸を激しく押して息を吹き込むと、ハルカはしばらくしてカッハッとつばを吐き出して、ぜーぜーと苦しげな呼吸を繰り返しはじめた。
…………ま、間に合った。
俺は放心状態で、ハルカの体を抱きしめる。
ホッとして涙がドバドバ溢れてとまんねえ。
「ご、ごめん…………ハルカッ…………ッ」
ハルカの顔を直視できない。
絞め殺すなんて、ありえない。
全身が恐怖に震えてとまらない。
「バッ……か、らい…………。てめえ…………ばかぢからだし……すぎ、……てか、泣くな…………ウゼェな」
俺の頭の上に力はないが、ハルカのでかい掌が置かれる。
俺の手形が、クッキリ首筋に残っている。
「…………ッ…………ひどくしてほしかったし、きにするな…………。まあ、ライになら、ころされても、文句ねえ…………」
ハルカの掠れた声には、俺を責める気持ちはなく、本心が見つからず、俺はハルカの顔を凝視する。
何を言われてるのか、わから、ない。
「やべえな。…………首絞められながら、俺、潮吹いちゃったぜ。びしょびしょ、ちゃんと見てたか?」
いったい、なんのことを言われてるのかわからない。
「わりィ…………なんか夢中で…………途中から記憶が…………ねえ」
ハルカは布団を気にしながら、俺の体を抱きこむ。
「次は力かげんしてくれよな。そしたら首を締めてもいいからさ。…………気持ちよかったし」
何も頭に入ってこない。
ざわつくのはこころなのか、なんなのかわからない。
「こわい…………ハルカころし…………た」
身体の震えは止まらない。張り裂けそうなのは心臓だ。
黒い恐怖がこころを占める。
俺の様子に爪をガジガジ噛みながら、ハルカは眉を寄せて軽く頬をピシャリとたたいた。
「ライ、落ち着け。俺ァ、いきてる」
「ハルカ、ハルカ、ハルカ」
俺はわんわんと、恐怖から逃れるようにハルカの胸の中で泣き続けた。
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