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第61話→sideH

ライの奴は俺に抱きついたまま、泣きじゃくった後そのまま寝てしまったようだ。 あんまりライを挑発したら、かなりマズイみたいだな。ライは昔からなんでも平然とこなす割に、俺のことになるとかなりメンタルが弱くなる。 どんなに激しくして欲しくても、煽って刺激するのは得策じゃねーな。 あんなふうに泣かれんのは、俺もつらくてイヤだしなァ。 いつも、ライはイヌのように俺に付き従ってくれた。 大事なヤツなのは、今も昔も変わらない。 だから、俺は弱味を見せたくなくって出ていったのに。 悪循環だ。 だけど、もう手放せない。 「…………ハルカ、ごめん、俺、寝ちまった…………」 やっと起きたのか、ライは俺の腕の中でごそごそ、モゾモゾし出す。 糸目の周りが真っ赤になっている。 「疲れたんだろ。…………まだ、寝ててもいい」 「いや……ハルカ、腹減っただろ。俺、朝飯作るし……」 なんだかどことなく歯切れが悪いのは、まだしたことを気にしているからだろう。気にしなくていいって言ったらきっと、コイツは更に気にするよな。 多分、首を締めるのはライの愛情表現だというのは、わかる。 ライがひどく恍惚とした表情で、俺の首を締めていたのを苦しみながらもずっと見てた。 でも、苦しいだけじゃなくて、なんだかふわふわっとした気分で、俺も愛されてる感じで、気持ちよかった。 体を起こしたライは俺の首筋を見て、手で口許を覆う。 あー、こりゃダメだな。 「もう、いーから、ライ!早く作ってこい」 俺はライの背中を叩く。 とりあえずこいつには痕は見せないようにするか。 転がっているタオルを、とりあえずだが隠すように首に巻き付ける。 「なあ、ライ。俺、服ほしい」 背中を向けてキッチンに向かうライに俺は声をかける。 「あ、ああ。そうだよな。俺のじゃ窮屈だもんな。キャハ、じゃあ、今日はハルカとショッピングだな」 気を取り直したように、声が少しだけ上ずって聞こえる。 オマエに殺されるなら、それでイイよなんて、ライには残酷な言葉言っちまったな。 後悔なんざ、趣味じゃねえっての。 俺はそれでも、どうしようもない。 身体がひどくされたいと、訴え続けている。 大事にしたい。 なんもないゴミみたいな俺を命がけで助けてくれた、ライの気持ち、無駄にはしたくねえ。 わかっているのに、身体が疼いてたまんねえよ。

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