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第70話→sideH

マンションに着いてからも、ライは無言で俺の腕をグイグイ引いていく。 怒っているのとはまた違う、どこか苛立ちを含んだ表情に俺は何も言えなくなっていた。 俺より少し低い身長だが、腕っ節もあったし俺とは違って頭が回るやつだったから、下のヤツらも俺よりもライを頼っていたように思う。 高校もライなら別のとこにいけたのに、なんで、離れなかったのか、ずっと不思議だった。 マンションに入って玄関で靴を脱ぐ。 まだ掴んだままのライの指先が肌にくい込んだままだ。 「をい、いーかげん、離せ。腕、いてえよ」 「……わりい」 「馬鹿力…………」 腕を離され箇所を見ると、軽く鬱血している。 力強すぎだろ。 「…………後悔してる。さっき、アイツについてけば良かった……」 ライの細い目がカッと見開かれた。 唇がわなわなと震えて、表情に怒りが垣間見れる。 あー、怒らせたなあと思うが、1度切った堰はとまらない。 ぶっ壊されたい。 ぶっ壊したい。 わけのわからない、被破壊願望。 何をどう言えば、ライの沸点に届くかは俺は知っていた。 「…………助けてなんてほしくなかった。何もわかんなくなっちまうくらいになれば……セックス三昧で幸せになれ…………ッグッ」 目の前が真っ暗になって、痛みが脳天に突き刺さり床に倒れる。 かはっかはっと咳き込み、見上げるとライは泣きながら俺の腹を殴りつける。 泣いてんなよ…………バカだな。 昔からずっと俺の後ばかり追ってきて、人生狂わせちまったのに、これ以上、オマエの負担になりたくねえよ。 だから、もう一度言う。 「…………助けてなんか、ほしくなかった」

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