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第69話→sideH

気がつくと脱がされたズボンはおざなりにだが着せられて、車の助手席で寝かされていた。 上着は面倒だったのか上に引っ掛かっているだけだ。 俺は痩せたといってもライよりはでけえし、重いから運ぶのも精一杯だったんだろう。 酷くしてほしいと願いを伝えたのは、本心だけど本当にしてくれるなんてライは本当に俺に甘い。 横目で見るとなんだか、不機嫌そうである。 最後まで射精させてもくれなかった。 酷いのを望んだのは俺だから、仕方がないけど身体がまだ燻っている。 擦り付けられた木の棘が刺さってるのか、亀頭も痛い。 「…………さっきよ…………トイレで誰かと会ったのか」 ハンドルを切りながら、ライは苛立ちを隠さずに俺に問いかける。 トイレ…………。 俺はようやく、上着のポケットに入れた水上の名刺が入っていないことに気がつく。 見られた……か。 ライの不機嫌な理由に思い当たると、俺は視線を逸らす。 「あ、ああ。さっき言ったろ?…………客に会った」 俺を調教した男に、会っちまった。 「そうか。もう一度会いたかったのか」 ライは少し汚れた名刺を座席の物入れから取り出して俺にちらりと見せる。 「そんなんじゃねえ」 「じゃあ、なんで捨てない?」 そんなの、オマエに捨てられたら頼るとこなんてないから保険にしただけだ、なんて言えねえか。 「返せ」 俺がすごんでみせると、ライは後でなと言って自分の胸ポケットに入れる。 「俺は……酷くするとか、SMとかよくわかんねえけどよ、オマエの望みかなえっから、ハルカ…………もうどこも行くな」 自信なさそうな不安そうな表情にぶつかる。 「はっ…………無理すんな」 そんな顔をさせたいわけじゃない。 なんで、わからないんだよ。 「無理じゃねえよ」 「…………バーカ。……今だって、はやくオマエに突っ込まれてえばかりしか考えてねえよ」 吐き出すように告げると、ライは俺をちらっと見やり頷いてスピードを加速した。

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