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第74話→sideH
「君は来ると思っていたよ、ハルカ」
水上の名刺にあるビルに行き、受付で水上の名前を出すとすぐに受付まで出迎えにきた。
こいつの思惑通りというのは気に入らなかったが、他に行く場所を思いつかなかった。
「.....アンタは金払いが良さそうだったからな」
思ってもない言葉が出るが、水上は気にした様子はなく、俺の腫れた頬に触れる。
「ひどい怪我してる。飼い主にやられたのかい?」
「.....アイツは飼い主じゃねえ」
「素直じゃないからお仕置きされたのかな。首にも酷い痕があるね。君の飼い主はDVが好きな子だったのかな?酷いね」
水上は目ざとく首にある鬱血の痕に指を這わせる。
「.......ッ」
お仕置き、とかじゃない。
ライのこれは愛情表現で、DVとかじゃない。だから、俺が傷つく度に泣きやがる。
泣くアイツなんて見たくない。だから出てきたというのに、アイツな悪口を言われると頭にくる。
「.....性癖だ。別に暴力されたわけじゃない」
あれは、暴力じゃない。力じゃ、俺はライには負けないし、好きにさせてやったのは俺の意思だ。
「まあ、少し汚くなっちゃったけどいいよ。おいで、買ってあげる。欲しいものはある?」
「.....住むとこ」
自分の住むとこすらどうにもならない。
とりあえず、生きる術を探さないと。
あー、何のために生きるかすらわからねえけど、のたれ死んだ方がいいのかもだけど。
「飼ってあげた方がいいのかな?」
水上は手を伸ばして俺の頭を撫でる。
それでも、いいだろう。
水上は俺の腰を抱いて、エレベーターに乗ると5階のボタンを押す。
「今日はパーティはないのだけど、人が集まっているからね。手始めに接待してもらおうかな」
「オマエの誕生会、みたいな?」
ふと連れてかれた誕生会のことを思い出す。
あの時も最悪だった。
輪姦はなかったが、似たようなものだった。
「あそこまで人はいないけどね。僕の倶楽部の会員のイベントだよ。日曜日は毎週やっているんだ、ハルカは、どうされたい?」
「そうだな.....ぶっ壊してくれ」
ああ、そうだ。
生きていきたいとか、そんなんじゃなかった。
俺は何もかも分からなくなりたいんだ。
水上は少し目を見開いて俺を見返して、手を伸ばして頭を下げさせて胸元へと引き寄せる。
「そんなに、辛いことがあったのか.....ハルカ.....」
囁きに俺は何故か安堵して、頷いた。
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