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第81話→sideRT

こんなにも話が上手くいくことなどあるのだろうか。とりあえずハルカの体が心配なのは確かなので、ストレッチャーに載せたまま部屋まで運び、半ば意識が朦朧としている体を抱えて風呂に入れて洗った。 ハルカはされるがままで、ぼんやりしたまま俺を見ていた。医療班がやってきて薬やなにやらを塗る間も何も言わずに、ぼんやりしたままで、俺は不安になりながら、ずっと傍らで腕を握っていた。 俺よりでかい掌が、ずっと小刻みに震えているのがわかった。 声をかけるべきかどうかためらってハルカを見つめていると、ハルカは俺の体にしなだれかかってきた。 「.....ハルカ?」 いつもしないような仕草に驚いて声をあげる。 「.............バカ.....だな.....、ライ」 掠れきった声はハルカのもので、水上が精神崩壊してる可能性があるといったが、ハルカは壊れちゃいないようだった。 「ああ.....もう逃がさねえよ。オマエは俺のだ」 宣言して強く手を握ると少しだけ安心したかのように、体重を移してくる。 「いいのかよ.....ケツはガバガバだし、何もねえ」 「そんなのは関係ねえよ。ハルカのためなら何でもする。.....三つ子の魂百までなんだよ.....」 腰に腕を回して抱き寄せると、ハルカは眉を軽くあげてグッタリとしたまま目を伏せて首を横に振る。 「.......オマエがそんなんだから、俺は逃げたくなる。オマエから逃げられるなら.....死んでもイイって思ったくせに、覚悟がなかった.....、最後の最後でオマエと生きたいと思った」 だから、誓いを口にしたのだと告げたハルカに胸がざわつく。 逃げさせたのは、俺のせいか。 「.....ハルカ」 「俺は、もう普通に生きられねえ。オマエに支配して欲しいと願っちまう。そんなことを言うくらいなら死にたいと思った。だけど、死ねなかった。もう、俺はオマエのボスじゃいられない。それでもいいか?」 低い声で迷いながら告げるハルカは、いままでのハルカとは変わっていない。 だけど、正直な気持ちなのだろう。 「.....ああ.....元々そんなの求めてない」 ハルカはキュッと俺の手を強く握る。 迷うような唇が、僅かに震えている。 「じゃあ、俺の御主人様になってくれ」 「ハルカ。分かった.....。ハルカをもうどこにも逃がさない。一生俺のモノだ.......」 言葉を強くすると、ハルカは気恥しいのか俺の胸に顔を押し付けて頷いた。

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