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第82話→sideRT
ハルカの背中を撫でていて、大分落ち着いてきたのがわかる。落ち着いたら、早くここを出なくてはならないと頭のどこかで考えている。
あまり長居をして取り返しがつかないことになるのは勘弁だ。
ハルカの首には、来た時につけられたのか黒い首輪がつけられている。カギがついているが、外せないことはないだろう。
その革が、俺が付けた痕を隠していて少しだけ罪悪感が減っている。
「なあ、ハルカ。車で来ているけど駐車場まで歩けるか」
車をもってこようかと考えたが、ハルカを1人にはしたくないので、ハルカが歩けないならば背負うしかない。
「.....ああ.....腰が抜けてるけど、ライにつかまっていけばなんとか.....」
小さいポニーとはいえ、人間じゃないものに力任せに貫かれたのだ。いま意識を保っているのが不思議なくらいだろう。
どうにか歩けないこともない、か。
体を起こそうとすると、ガチャリと扉が開いた。
思わず身構えると、水上がゆっくりと入ってくる。
「.....ハルカ、もう、動けるのかい?」
まるでモニタリングをしていたように、頃合いのいい登場である。いや、きっとモニタリングしてたのだろう。
「.....ああ.....まあ.....うご、ける」
ハルカが、水上を見て恐怖にか体を強ばらせているのが伝わる。
「まだゆっくりしていきなさい。ミネ君には、ちゃんと奴隷の飼い方を教えてあげないとならないしね」
水上が近寄ってくるのに、俺は警戒を解かずにハルカの体を引き寄せる。
「飼い方?.......なん、ですか」
「ミネ君には、まだレクチャーが必要だからね。ハルカ、君もちゃんと協力するんだよ」
「レクチャー、って....」
「.....人間を支配するための方法だよ」
水上の言葉がわからず、俺は眉をキュッと寄せて視線を向けて、ハルカを見返すと、ハルカは俺をちらと見やり少し俯く。
ハルカは支配、されたいんだったか。
「僕がハルカを返すのは、君が串崎からの譲渡書を持ってるというのが大きいけどね。この世界は契約がすべてだから」
言いながら、もってきたトランクをあけて机の上に札束を並べ出す。
「これは、君の所有物に傷をつけた損害金だよ」
ぱっと見で500万はありそうだった。
「ハルカが望んだこと、なんだろ」
「奴隷の望みなどは関係ない。我々の権利の問題だからね。これは君が受け取りなさい、そしてハルカの全ては君に帰属することを覚えておきなさい」
水上が言いたいことは難しく感じたが、ハルカの治療にかかる費用だと考え受け取ることにした。
「そして、ハルカは勝手なことをしたことを彼に詫びなさい。奴隷の詫び方は教えたよね」
水上がハルカに命じるのを、俺はいらついて睨みつけたが、水上は横に首を振った。
羽織っていたタオル生地のバスガウンを脱いで、裸になると、座っていたソファーから降りて膝まづいて俺の足の指先に唇を当てる。
「どうか.....ゆ、ゆるして、ください」
低い掠れた声が、床を反射して俺の耳に響いた。
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