19 / 121
第19話
「外の空気は気持ちが良いね……」
酔っ払いとか客引きの男性、そして客を見送りに出てきたホステス嬢や男性のお姐さん達がけたたましい声で笑ったり挨拶をしたりしている道を歩きながらユキがそんなことを言っている。
まあ、あの店内の淫らがましい空気よりはマシなのは確かだが。
あの司会者は二次会と言っていたが、三次会がないと良いなと思っていた。無駄に電気が眩しい――オレの勤務先も同様なので余り他所のことは言えた義理ではないが――道を店に向かって歩いていると、ユキが解放感に溢れた感じで伸びをした。
ユキはともかくオレにとってはこういう豪華で空虚な喧噪の巷を歩くのは日常の一コマなので、ユキの華奢な腕が泥酔していると思しき気弱そうな中年男に当たりそうになるのを慌てて庇った。
こういう手合いはアルコールが入れば普段の弱気とは裏腹にキレやすいことも知っていたので。
「あ、有難う」
どう見てもカップルの距離の取り方で歩みを進めていると――と言ってもこの辺りは「そういう」人達の街なので、羨ましそうな眼差しを向けられることは有ってもその逆はないのが有り難い――ユキが「ああっ」と小さく紅色のため息を零した。
「どうした……。もしかして中で出したのが零れて来たのか?」
先程の店内の様子からして、催淫剤の効果は切れている感じだったので「そういう」気持ちになったわけではないだろう、多分。ああいう薬はオレの知る限り効く時間は短い。
「ううん、そうじゃなくて……。何だか乳首が布地に擦れて熱く疼いてしまっていて……」
身体の変化に戸惑うような途方に暮れた声が極彩色のネオンの街に小さく響いた。
「ユキが特別ってわけでもない。男でも敏感な人間は弄られればそうなるように出来ているので」
そしてよりいっそうのけばけばしい電飾の看板を通り過ぎた時に、ユキの小さな部分をよく見ると白いワイシャツの布地を可憐に押し上げている。
「『男でも』って――女性はそれが普通なの?」
ユキが信じられないようなことを聞いて来た。経験しているかどうかはともかく「そういう」好奇心に旺盛なのが普通だし、男が寄れば決まって「そっち」系の話が出るのが普通なので知らなければおかしい知識のハズだ。
オレの職場では、オレの「女性客はトーク力と気遣いで女王様のように扱え」という持論が不動のナンバー1という立場も有って控室でそういう話はしない不文律だが、オレのヘルプをしてくれているキャスト達にお金だけ渡して焼肉とかを食べに行く時には「そういう話」で盛り上がっているらしい。
「ああ、そうだが。ただ、やはり個人差は有るらしいし……。ユキの場合は催淫剤を塗られただろう?
だからそういう感度が上がってもおかしくない。
デニム地の方がもっとごわごわしているだろう?あれを着た方がもっと悦楽が得られる……。ユキは二次会でお金を稼ぎたいのだろう?だったら、こっちで充分感じられるようにしておいた方が良いんじゃないか?」
決してからかう積もりではなくて、何かワケありの感じがするユキの――しかもお金を必要としていることは確かだ――助けになるだろうと詩織莉さんが着けていたネックレスの一番小さいルビー程度の大きさの乳首をツンと弾いた。
「ああっ……んっ……イイんだけど……。店の中じゃなくてここでするの……」
咎めるような感じではなくて単純に疑問に思っていることを紡いだ声という風情と、指で弾く度にヒクリと反る肢体が妙に艶めかしい。
「あの店の中だと、群集心理って分かるか?」
ユキの知識がかなり偏っている上に――身体と頭脳が直結しているのは頭の良い証拠だが――常識もオレとは異なるような気がして確かめた。
相手の水準に合せるのも、そしてその少し上の――お客によっては少し下――知識を披露するのも相手の心を掴むための身に沁み込んだテクニックだった。
「うん、集団心理とも言うね。その場に居る人達が集まった状況のもとで醸成されるその群衆に特有の心理のことだよね?」
ユキの頭の良さは分かっていたが、そういう心理学関係にも詳しいらしい。ますます謎が深まった。
「あの店に戻れば、集団が何を求めているか……分かるだろう?そして主役を無事に務めて大金を獲得するのがユキの望みだろう?だったら……」
細い路地に華奢な手首を掴んで引き入れた。
「ああ……んっ……。だめっ……お尻を開いたら、零れちゃう」
唇と歯でワイシャツ越しに乳首を弄り、両手で臀部の狭間を開くとユキの甘い声が弱弱しく抗った。
「可愛いピンク色の門から白い液を零していたユキの姿は絶品だった……。
白い蜜が薄紅色の太ももに流れていたり、こんなに硬くなっていたりする乳首は舞台の上の胡蝶蘭の白さに良く映えると思う」
前歯で挟んで舌全体で乳首を舐めた後にそう告げながら大きくお尻の谷間を分けた。
ともだちにシェアしよう!