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第24話

 会場は水を打ったようなというか、冷や水を浴びせかけられたように静まりかえっている。ざっと見ると8割程度の客が。  元から冷然とした氷の女王みたいな詩織莉さんはネンリーⅣのグラスを乾杯するように掲げて優雅で綺麗な笑みを浮かべていた。舞台の上の二人を応援してくれる感じで。  紺色のデニム生地をボタンが全滅しそうな勢いで破いた。  小さな乳首も先程の余韻と、そして硬い布が擦れたせいだろうが、綺麗なピンク色の花を慎ましやかに咲かせているようだった。 「この桃色、堪らない……」  上半身を胡蝶蘭の上から優しく起こした。  裂かれた衣服が――どうせ舞台衣装だ――申し訳程度に素肌に残っているのも却って扇情的で、しかも薄紅色に染まった素肌にも良く映える。  背後から両の手を回して、指で弾いた。 「ああんっ……。それ気持ち良い。とても……感じる」  先程よりも甘くて甲高く蕩けるような声を立てるユキは、あながち演技と言うわけではない。 「ユキ、後ろを向くんだ……。キスしたいからな」  観客には聞こえないように薄紅色に染まった耳朶を甘く噛みながら言った。  ユキの華奢な腕が後ろに縋るように回されて、上気した綺麗な顔が上を向いた。  派手な音を立てて薄紅色の唇を吸った後に舌で唇を開けるように促した。  「乳首を弾かれると、こんな良い声で啼くんだな……」  舌を絡めて吸いながら、息継ぎの合間に煽るように言った。ユキにも観客にも充分聞こえるように。 「リョウの……指だから……だよっ……。  さっきまでは……くすぐったいだけ……だった。  ああんっ……イイ。もっと強く弾いたり……摘まんだりして欲しいっ……」  演技でないことは撓って舞台の方へとせり出した跳ねる身体で分かった。 「ココがイイなんて、好き者だな……。スラックスは脱がして欲しいか?それとも自分で?」  ほんの小さな乳首を指で弾いては先端部分をクルリクルリと撫でる度ごとにユキの華奢な身体が若木のようにしなやかに反った・ 「ああんっ……。イイっ……。  ――僕が脱ぐ。それに、リョウの服を脱がしても良い?リョウのも愛したい……んでっ……」  健気な言葉はお芝居とは全く思えないほどの胡蝶蘭の赤紫を彷彿とさせた。  ふと思いついて、舞台の上に落ちていた――会場の空気を読んだのだろう、そそくさと舞台を降りたユリ達の濃厚過ぎる行為のせいだろうが――ピンク色の胡蝶蘭の厚い花弁を手にして、ユキの乳首を擽った。  その微細な感触にも感じるのか、背筋がほの紅い白魚のように跳ねている。  ユキがスラックスのジッパーを下げる音がした。ただ観客の興を削がないようにオレも手早く下半身だけを外気に晒した。  何しろ「お愉しみ」の最中で動きを止めた人間が多い。  舞台の上が詰まらないと判断されると。自らの行為に没頭しそうだったので。  詩織莉さんの方をふと見てしまう。  満足極まりない表情を浮かべていると思いきや何だか複雑そうな、そしてどこかが痛そうな感じの笑みだった。  無理強いとかのユキのショーも嫌っていたのに?と思ってしまってしまう。ただ、店外デートに行く時には「無理やり」といった感じのショーを好む傾向は有ったが。  ユキが薄紅色の下半身を露わにしたのを知って、クルリと身体を反転させた。 「さっき、注ぎ込んだ白いエキスを皆様にもお見せしよう」  そう言って桃のような尻の谷間を開いて、菊門を二本の指で思いっきり開いた。 「ああ……。それもっ……感じる。  太ももに滴って行く感触も」  ユキがゾクリという感じで身体を撓らせている。  オレの指にも白い粘液が滴っているのもむしろ心地よい。  オレの方からは見えないものの、観客のため息とか歓声でピンクの内壁とキュッと閉まりがちな門から刺激的な光景が繰り広げられていることが分かる。 「ああっ……。そこっ……。とてもイイっ!」  前立腺と思しき辺りを指で衝くとユキの声に一段と甘くて紅い砂糖菓子のような声が切羽詰まった感じで零れている。 「前立腺を刺激されると、男は皆気持ちが良くなる……。  前も当たっているぞ……。オレの素肌に擦りつけても良いぞ……」  枕営業はしていないといっても、女性に夢を売る商売なのでジムにも通っている。だから筋肉にも自信は有った。 「やだ……。出ちゃうもんっ……。気持ち良すぎでっ……」  観客の視線がユキの菊門とかその奥のピンク色に集中しているのは分かる。 「出してもイイさ。皆様に白い飛沫がピュピュッと飛び散る恥ずかしい姿も観て貰えば……。  ユキのイク時の顔も余すところなく、な……」  ユキの薄紅色に染まった素肌に汗の雫が浮いている。そして本当に限界が近いのか蝶のように跳ねている。 「ヤだっ……。一緒に逝きたいっ」  ユキの声が甘く蕩けている。胡蝶蘭の蜜のように。 「じゃあ、オレの息子も可愛がってくれるか。口で……」  初体験のユキには少し残酷な要求だったのも確かだ。何せ、同性のソレを唇で……というのはかなりハードルが高いだろう。 「うんっ……。キョウの望みならっ……」  快諾してくれたのは舞台の上だからと言うよりも何だかもっとひたむきな熱情に駆られてといった感じがした。 「じゃあ、お互いの息子を愛し合おう」  再び白い胡蝶蘭のベッドに押し倒した。  ユキの紅さを増した身体に胡蝶蘭が鮮やかな対比を描いている。  ユキの桃のような尻を舞台の方へと向ける配慮も忘れずに。  その方がユキのモノを愛しているオレの唇とか頬を窄めていることも観客に見える上にユキの門やその内部を指で拓いている様子もマザマザと見えるだろうから。  そして嬌声を零しているユキの唇がオレを愛している様子はタブレットで見て貰えるし。

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