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第118話

 自覚はしたが、ここでユキに「薬物を含む」深すぎるほどの悦楽を与えてはならないということは分かっていたので、ともすれば押し倒しそうな、そして行為に雪崩れ込んで行きそうな衝動を必死で堪えた。  そんなことをすれば詩織莉さんに申し訳が立たないし、薬物に頼った「行為」で安易に快楽を与えればユキにとっても「薬物依存」という重すぎる枷にもなってしまう。  それだけはどうしても耐えなければならない。思わず奥歯を噛みしめながらそう心に誓って敢えて心を鬼、いや鉄の鎧で覆うことにした。  ユキのピンク色の穴はいやらしくヒクヒクと動いているし、その中に指を入れて一定のリズムで蹂躙している様子は何だか物凄く淫靡で艶めかしかった。  それは認めざるを得ないし、理性では逸らそうとしている視線が釘付けになってしまうのは仕方がないだろう。  初めて会ったショーの時のユキも初心者とは思えないような艶やかさだったが、一度「恋人」としてのそういう行為をした後なのでその艶やかさはより一層の鮮やかさだった。  あ!ショーの時……。  必死でユキの魔性めいた姿態から理性を取り戻そうとして良いことを思いついた。  ショーの時には詩織莉さんの「好意」でユキの相手役になった。しかし、彼女と一緒に見に行った「そういう」ショーでは観客として参加した時の方が断然多い。  そもそも詩織莉さんだって主役が愛する弟のユキだからこそオレに相手役を振ってきただけで、何の関係もない人達が愛し合うショーの時にはただの観客として観て来た。まあ、それが当たり前だろうが。  気分を変えるように思いっきり頭を振ってユキが開いているピンクの穴とか淡い胡蝶蘭のような指を「他人事」として観るようにしようと決意を新たにする。  そもそもユキを好きになったのは容姿ではなくて性格とか賢明さの方だった。  ユキだって充分綺麗な容姿はしているものの、オレのド・ストライクかというと少々微妙という面も少なからずは有ったので。  まあ、今となってはユキの身体ごと愛してはいるが、それはユキの怜悧さとか好ましい性格も含めたことだった。  そして、今のユキは――薬のせいなので彼のせいではないものの――あの忌々しいユリなどのように、肉欲とか情欲の虜になっている。  そう、詩織莉さんと行った数々のショーの舞台の上にいる人たちのように。そして、胸糞悪いユリのように。  目の前で乱れた胡蝶蘭の痴態を繰り広げるユキの姿は確かに扇情的過ぎて頭がアヘンを――だったと思うが定かではない――吸引した時のような極楽の極みにまで持って行かれそうになるが、これは「舞台の上で繰り広げられた」ショーだと思おう!痴態を鑑賞するのは良いがオレは舞台の下に居てただ単にそれを観て楽しんでいるだけの「立場」だと思い込ませようとした。  ま、ユキの可愛いピンク色の穴に指が挿っていって――ただユキの最も感じるトコロはユキの指では届かないのも知っている――もどかしげに身体をくねらせて丸まっている。  指がもっと奥深くに挿れるようにするための苦肉の策なのだろうが。  ただ、それだけでは届かない場所にユキのイイ処があるのも知っている。オレの指は長い方だがそれでも無理な場所にユキの最も感じる場所が有るのは知っている。オレの男性の象徴――大きさと長さにはいささか自信がある――しか届かない場所、なのだから指では無理だ。  もどかしげにくねるユキの一糸纏わぬ姿が紅色の蛇のように可憐に、そして色っぽくオレの目を魅了している。  だが、これは「ショー」で、オレは観客の一人に過ぎない!!そう思っていなければ、辛うじて残った理性のタガが簡単に弾け跳ぶくらいには魅惑的だった。 「リョウっ……。来てっ。ひどくしてもイイからっあぁっ。  大きくて長い物で思い切り抉ってっ!!イイけどっ!!物足りないっ!リョウのじゃなきゃヤだぁっ!!」  床に付いたユキの後頭部からそう長くはない髪の毛がぱさぱさと物欲しげに揺れるのもとても綺麗だった。口調は物欲しげな欲情に濡れている感じの甘い声だったが。  ただ、オレの名前を本名から取った「シン」と呼ぶとユキは言っていた。それなのに源氏名で呼んでいるのもユキに理性が残っていないからなのだろう、多分。  薄紅色に染まった頬から涙を流して懇願するユキの艶姿にはぐらりと理性が揺らぎそうになるが、詩織莉さんと行った――今は異なるようだったが「無理やり系」とかそっちの方が彼女は好きだったので、おのずと店外デートは「そういう」ショーを見に行く機会が多かった。  その中でも「恋人がいるのに他の男と無理やり、しかも『恋人』が居る前で――」というシュチュエーションが有ったような気がする。  そういうショーだと思えば少しは割り切れるような気がした。  詩織莉さんとの店外デートは――今は少し関係性が異なるが――あくまでも仕事の一環だったし、ショーもそれなりに楽しんだとはいえ全くの他人事だった。  その経験がまさかこんなところで役に立つとは思ってもみなかった。  人間、やはり経験しておくものだな……と、ともすればユキの痴態に挑みかかりそうな本能を必死に抑えながら考えていた。 「やっ!イイっ!!イクっ!!イクっ」  足の指が丸まっていたし、ユキの身体もビクビクと跳ねる紅色の白魚のようだった。  その可憐で妖艶な痴態に眩暈がした。  口の中がからからになって来たことに気づいたが。

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