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寂しい

まだ残暑が厳しい中、二学期が始まった。 終業式では、まだ幼さが残っていたクラスメイト達が、このひと夏を終えて一皮剝けたように見える。 ──日焼けした肌。輝く瞳。明るい顔付き。纏うオーラ。 僕の首筋に残る、幾つかの痕。 どうにも隠せなくて、曝されてしまっているものもあるけど。 多分、周りはそんなの気にしてない。 気付いてもいないと思う。 「……」 窓際の一番後ろである自席から、視界に映り込む、今井くんの姿。 数人の男友達と連んで喋っている光景は、夏休み前と同じで。 僕との間に、何にも無かったかのような空気と距離感があって……哀しい。 あの日──別れ話を切り出されて、強く引き止められないまま別れてから…… 今井くんからのメッセージがぷっつりと途絶えた。 あれから全然、顔も合わせていないし、言葉だって、交わしてない。 まるで最初から、全部無かったみたいに。 最初のうちは、淋しくて。 でも、それだけで今井くんと関わるのは、気が引けて── 友達でも何でもない。 ただの、クラスメイトの一人。 その立ち位置に、徹するしかなかった。 そして。 月日は流れ──次第に深まっていく秋が、夏の痕跡を攫っていく。 陽射しに柔らかさを感じ、木の葉が赤や黄色に色付き始め、爽やかで涼しい秋風が吹く頃になると──夏服だった制服が冬服へと変わる。 その変化に、僕だけが上手く順応できていない。 一方通行の道の上を、順調に前へと進んでいくクラスメイト達の背中を眺めながら……いつまで経っても同じ場所に立ちつくしているような気さえした。 大空のいない教室は、それだけでまだ違和感があるのに── みんな、もう忘れてしまったのか。 それとも、割り切ってしまったのか。 それが当たり前のような空気に、すっかり様変わりしてしまった事が…… 何よりも、寂しい。

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