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落陽

車から降り、ロープウェイ乗り場へと向かう。 冬の山という事もあり、コートにマフラーを巻いただけでは、寒さが身に染みる。 悴む手を擦り合わせていれば、樹さんの大きな手がその手を取り、優しく包み込むように握られる。 「──!」 地元を随分と離れ、田舎の寂れた観光地とはいえ……人がいない訳じゃない。 一年に一度の特別な日──クリスマス・イヴともあって、それなりに駐車場は車で埋まっているし、カップルや家族連れが疎らながらにいる。 そんな中、男同士で手を繋いで歩くなんて……やっぱり恥ずかしい。 「………大丈夫。周りはそんなに気にしていないから」 「……」 僕の心情を察したのか。スッと肩を寄せた樹さんが、そっと耳元で囁く。 その吐息や声、肩が触れる程の距離の近さに……耳が熱くなり、繋いだ手のひらがじわりと汗ばんでいく。 最終に近い事もあり、ゴンドラに乗ったのは、僕達を含めて3組のみ。 ゴンドラ上部の小窓が開いていて、風通しを良くしているものの、外にいるよりは随分と寒さを凌げる。 後方のシートに並んで座り、少しスモークがかったガラスの向こうを眺める。 遠くに薄ぼんやりと見える、形の良い山の陰。その脇に掛かる、鮮やかな橙色をした夕陽。じっと眺めていれば、秒単位で沈んでいく様子が覗えた。 「着くまでに、全部隠れちゃいそうだね」 穏やかながら少し寂しそうな声がした後、膝の上にある僕の手に、樹さんの手がそっと重ねられる。 「………うん」 トクトクと高鳴る心臓。 きゅっと握られる手。 導かれるように隣を見上げれば、それに気付いた樹さんが、弱々しくも優しい視線を僕に向けてくれる。 「……」 ……だけど。 夕陽に照らされたその顔は、何処か憂いを帯びていて。堪らなく僕を不安にさせた。

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